総合法律研究所

総合法律研究所とは

 総合法律研究所は、平成8年2月に、会員の知識・技能を高め弁護士業務の改善進歩を図る目的で、各種法律問題の調査研究等をする委員会として設置されました。以来、当会のシンクタンクとして、さまざまな分野における法制度の研究、発表を行い、専門家の養成に道を開いてきました。

 現在、16の研究部会が設置され、延べ1400名を超える会員が研究部会員として活動し、企画運営部会がその活動を支援調整しています。
 会員は、これらの研究部会に参加し、専門分野の研究に取り組むことで、専門性を身につけ研鑽を積むことが出来るほか、一定の手続きを経て自らテーマを設定し、研究部会を新設することも出来ます。

 また、平成27年には総法研創立20周年企画セミナーを開催し、それを元に、新たな内容を追加して、総法研叢書として『法務リスク管理最前線-ガバナンス、リスク管理、コンプライアンスを中心に-』を刊行しました。

各研究部会の紹介

会社法研究部会

 会社法及びその関連分野(上場企業法制等)に関する研究活動及びその研究成果の発表を主な活動内容としています。
 研究成果の発表として、セミナー、出版、パブリックコメントに対する意見提出など、積極的な活動を行っています。特に、毎年実施される模擬株主総会の企画・監修および実演は、会社法研究部会が行う最も大きな研究発表の機会の一つです。
 継続的な研究活動として、定例部会における研究発表のほか、最新の実務問題を研究する企業法実務問題研究会を開催しています。

金融商品取引法研究部会

 金融商品取引法上の問題につき、重要な法令の改正や実務上の重要な問題を研究するほか、上場会社の企業法務にとって重要な東京証券取引所などの取引所規則について研究対象としています。さらに、法令等の適用の有無・是非の議論の前提として、新たな金融商品・取引の仕組み等についても研究テーマとして随時取り上げ、理解を深めております。
 また、これまでに、金融庁、証券取引等監視委員会、東京証券取引所等の関係機関や大学教授などの外部専門家を講師として、セミナーを開催しています。

知的所有権法研究部会

 知的所有権に関連する法律といえば、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法くらいは、誰でもすぐ思い浮かべることができるでしょうし、もちろん、その他にも、不正競争防止法、種苗法、半導体集積回路の回路配置に関する法律なども関係してきます。
 当研究部会はこのような知的所有権に関する最新判例を研究し、その成果を部会員の日々の業務を通じて社会に還元するとともに、広く情報発信していきたいと考えています。

倒産法研究部会

 400名を超える部会員を擁し、倒産法分野における最新の動向や事例などの情報を交換すること、倒産に関する諸制度の研究を行うこと、それらの成果を講演・シンポジウム・出版等によって発表することなどを目的とし、倒産法をめぐる実務と理論の研鑽の場となるよう様々な活動を積極的に行っています。また、若手弁護士に対する破産管財人実務の研修会を継続して実施し、多くの若手弁護士が参加しています。倒産法務に関する先端の議論などについて、東京弁護士会や第二東京弁護士会の倒産法に関する研究部等との共催による研究会やシンポジウムを開催することもあります。さらに、裁判所との協議会等の機会を通じて、倒産実務に対する意見を発信しています。
 倒産実務に精通した方ばかりでなく、これから倒産法を学んでみようという方や、弁護士登録をしたばかりの若手の方まで、幅広く参加しています。

スポーツ法研究部会

 スポーツ法研究部会では、プロ・アマチュアを問わずスポーツに関わる法律問題を広く研究しています。スポーツに関わる法律問題は、きわめて多岐にわたる内容を含みますが、当部会ではいくつかのテーマを順に取り上げて研究を行ってきています。
 近年取り上げたテーマとしては、スポーツ基本法に関する研究、CASドーピング判例の研究、スポーツ選手の不祥事による責任問題の研究等がありますが、今後はさらに他のテーマも取り上げて研究を続けていく予定です。
 当部会の部会員の中には、スポーツ法実務の第一線で活躍する実務家、日本スポーツ法学会、日本スポーツ仲裁機構等で活躍している会員も多く所属しています。また、近年、若手の会員が増えており、活発かつ充実した研究活動を行なっております。スポーツ基本法が成立し、今後は具体的な個別法の立法が必要となります。日本スポーツ法学会をはじめ他の同種研究会との連携、情報交換を行いつつ、スポーツ法に関する研究をさらに深め、立法提言ができるような部会へと進化していきたいと考えています。

中国法研究部会

 中国法研究部会では、中国の法制度、法律実務、裁判例及び契約書等の研究並びに中国人弁護士との交流等を主な活動内容としており、毎月1回、定例部会を開催しています。
 定例の部会では、会員自身が関心のある中国法または中国法に関連した渉外実務について発表を行い、参加者全員で討議をします。また、不定期ではありますが、外部講師を招聘するなどして、中国法を体系的に学ぶ努力をしています。
 経済の国際化に伴い、日本の弁護士も中国法を理解することが求められており、契約書や証拠資料の検討、会議等においても中国語は必要不可欠となっています。法律はもとより、中国の歴史、文化、人間、古典、中国語に興味がありましたら是非当部会にご参加下さい。
 (ご参考)会報2022年5月号総法研だより「中国法研究部会」PDFファイル(534.8KB)

行政法研究部会

 行政法とは、一般市民の間で起こる紛争とは別に、行政の独自の行為を規律する法律の総称であり、当研究部会では、一般市民と行政との間の紛争に関する判例研究、法改正への対応を中心に活動しています。
 これらの活動を通じて、より良い行政の活動を実現するべく、広く行政の意見公募手続(パブリックコメント)への提言や、研究成果の発表を行っていきます。
 さらに、許認可をはじめとする企業の視点に立った行政法務、地方公共団体における自治体法務、行政対象暴力などの実務に関する研究・実践や、行政連携センター設立に向けた研究・実践に取り組んでいきたいと考えております。
 (ご参考)会報令和3年2月号総法研だより「行政法研究部会」PDFファイル( 550.4 KB)

CSR(企業の社会的責任)研究部会

 当部会では、企業やその他の組織のCSR活動の支援を目的として、近時の法改正の動向等も踏まえつつ、研究を行っています。例えば、最近取り上げたテーマとして、①英国現代奴隷法の域外適用への実務的な対応(外部講師によるレクチャー)、②企業におけるCSRの取組み実例(外部講師によるレクチャー)、③経団連企業行動憲章及び実行の手引き(部会員による研究及び外部講師による全体研修の開催)、④日弁連ESGガイダンス(部会員による研究)、⑤SDGs(部会員による研究)、⑥ビジネスと人権(部会員による研究)などがあります。
 CSRと言いますと、従来、いわゆる「社会貢献活動」との違いが充分意識されておりませんでしたが、本来は、企業等の価値と持続可能性の向上を目的とした、コンプライアンス、人権、労働、環境、消費者、公正な事業慣行、地域参画などの諸課題への対応を包括したものです。特に、国連の「SDGs」(持続可能な開発目標)採択決議を契機として、SDGsへの取組みは巨大なビジネスチャンスとなり得ます。CSRは、このSDGsをも包含するものであり、わが国においても、企業や他の組織によるCSRへの取組みは、今後さらに普及していくでしょう。地域参画を除く上記の諸課題は、いずれも法令に関わるものであることから、我々弁護士は、CSR推進のための最良のパートナーとなることができます。
 また、2011年に、「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合「保護、尊重及び救済」枠組実施のために」が国連人権理事会に全会一致で支持されたことをきっかけとして、わが国政府もビジネスと人権に関する様々な取り組みを進めており、企業等もより一層ビジネスと人権の課題への取り組みを強化及び拡大することが予想されます。もちろん、この課題の推進のための最良のパートナーが弁護士であることは言うまでもありません。
 当部会は、このようなCSRの諸課題に取り組む企業等の法令面からのサポートに役立つような研究テーマを、各部会員からの提案を基に決定し、部会員による調査・発表や内外の専門家による講義の受講など、様々な方法を通じて研究しています。今後も、研究の一層の蓄積を図りながら、研究成果の発信に向けた取り組みも併せて進めてまいります。

遺言信託実務研究部会

 団塊世代の大量定年時代を迎え、今後、世代交代に伴う様々な法律問題、法的紛争が生じることが予想されます。当部会は、このような世代交代に伴う法的紛争処理の社会的ニーズに応えるべく、遺言信託という法的技術を中核に据えて、事業承継、渉外相続、福祉信託、夫婦間財産契約等のテーマを総合的、横断的に研究し、世代交代に伴う諸問題の法的処理方法を新たなビジネスモデルとして構築することを目標としています。具体的には、各テーマの研究、研修会開催、出版等の活動を予定しています。

租税訴訟実務研究部会

 近年、租税訴訟を巡る状況は大きく変動しました。平成12年においては215件にすぎなかった租税訴訟の訴訟提起件数は、平成22年には350件と、ここ10年で約1.5倍に増えています。しかも、近年は、誰もが名前を知っている国内・国外の大企業に係る大型の事件や国際的な事件等が増えており、租税訴訟はより複雑化・専門化してきています。
 しかしながら、その勝訴率は、平成12年において6.0パーセント、平成22年においては7.6パーセントと、極めて低調なままです。この要因の1つとして、弁護士の専門化がまだ不十分であることが考えられます。東京地方裁判所において租税訴訟が提起された場合、租税訴訟は、平成16年の行政事件訴訟法の改正後、専門部で集中的に取り扱われるようになりました。また、被告となる国は、国税局にいる100人以上の専門官が四六時中、租税訴訟に取り組んでいます。他方、弁護士は、基本的には法律の専門家であって税務の専門家ではありませんし、租税訴訟にだけ取り組んでいるわけでもありません。このような状況で国と対等に戦い勝訴判決を得るには、弁護士・税理士等の職種の垣根や法律事務所の垣根を越えて日々研さんを積み重ね、相当に高度な専門家集団を形成することが必要不可欠です。
 そこで、租税訴訟に実戦的に対応可能な弁護士が一人でも多く輩出すべく、本研究会においてみなで切磋琢磨するとともに、必要に応じて適宜講演を実施するなどして、研究結果を一弁会員の皆様に発表する予定です。

現代中近東法研究部会

 イスラム教文化圏は、イスラム教が成立して以来、イスラム教に合致した法体系を採用し、欧米とは異なる体系の法文化を発展させてきました。そのイスラム法文化が現代中近東国家の法体系にいかに影響を与えているかを探求し、欧米法を移入してきた我が国の法体系との異同を明らかにし、もって我が国とのかかわりの中で生じる現代中近東諸国での法律問題解決の一助とし、また他方で異なる法文化と比較することで我が国の法解釈の一助とすることを検討する予定です。

医事法研究部会

 医事法に関連する法律問題全般に関する研究及び研究成果の公表が主な活動内容です。具体的には、医療事故・医療安全、医療にかかわる生命倫理、終末期医療、医療法人・医療機関の運営、医療政策と法制度、先進医療と研究開発、医療保障等に関する法制度・法律問題の研究等が研究対象に含まれます。既に存在する東京三会医療関係事件検討協議会の活動範囲である医療過誤訴訟を中心とする医事紛争に関する研究も活動対象の一分野ですが、これに限らず、医療を取り巻く現代的課題やそれに関連する法的問題点、法制度論を広く研究対象とするものです。

独占禁止法研究部会

 当研究部会の主な活動内容は、独占禁止法及び下請法等の関連法規に関する研究及び研究成果の公表等です。
 行政による事前規制中心の社会から、司法による事後規制中心の社会への移行が指向されるようになってから既に一定の時を経て、社会活動に、事後チェックに耐える公正さと透明性が求められる度合いは、さらに高まっております。また、グローバル化の影響は、国際的な事業活動のみならず、国内の様々な商品役務を巡る事業活動に大きな影響を及ぼしています。そして、その中で弁護士が果たすべき役割も、さらに大きなものとなってきております。当研究部会は、かかる状況に鑑み、会員相互の研鑽を通じて、より一層、弁護士に求められる社会的な責務に応えていくことを目的として、活動を行って参ります。
(ご参考)会報平成27年11月号総法研だより「独禁法研究部会」PDFファイル(65KB)

IT法研究部会

 現代社会においてはインターネットをはじめ、IT関連技術が社会の隅々まで関係しており、弁護士業務にとってもITの知識と理解が不可欠となっています。当部会では、そうしたITに関連する法分野(①IT関連法制度、②ITを巡る法的問題、③その他のITを巡る課題)について研究を行っています。
 過去には、部会員有志を中心に、「デジタル証拠の法律実務Q&A」(日本加除出版)との書籍を出版したり、「データ戦略と法律」(日経BP)という書籍を出版したりしています。
 また、多数のシンポジウム等も行っています。
 定例会では、毎回、ITに関係するテーマについて、発表者の方に発表頂き、積極的に議論を行ったりしています。
 ご関心がある方がいらっしゃれば、ぜひ、お問い合わせいただき、ご参加いただければ幸いです。

会計・監査制度研究部会

 市場の重要なインフラである上場企業の財務報告の適正さを確保するための制度に関して、財務報告と財務諸表監査をめぐる制度及び法律問題を主な研究対象としています。
 重要な制度・法律問題の動向を議論するほか、財務報告や監査の基準、さらに不正会計事案の調査報告書、不正会計事案の裁判例などの多様なトピックスについて、財務会計基準機構の会員、金融審議会ディスクロージャ―ワーキング・グループのメンバー、企業会計審議会・監査部会の委員・元委員、公認会計士資格保持者、社外監査役、社外取締役の経験者等の部会員が学者・外部有識者とともに議論しています。さらに、海外での議論・実務の動向や国際的な監督当局の連携などの情報を共有・参考にして、制度の理解や改正の議論の理解に活かしています。
 法制度と会計・監査との交錯する分野であるため、金融庁、公認会計士監査審査会、日本公認会計士協会、監査役協会から講師を招聘し、講演会やシンポジウムを企画・実施しています。また、部会員有志の執筆による書籍の出版もあります。
 現在、2018年7月の監査基準の改訂を受け、2020年3月期の早期適用から新しい形での監査報告が始まり、財務報告と監査の在り方、そしてそれを取り巻く開示制度が大きな変貌を遂げようとする中、財務諸表の利用者である投資家の関心も高まりつつあります。これまでに想定しなかった法律問題や法制度上の対応の議論が今後は必要となってきます。ビジネスにも直結する実務問題も多い開示・会計・監査に関心のある会員の方は、是非当研究部会への参加をご検討ください。

宇宙法研究部会

 現在、世界各国において、小型衛星の開発、軌道上での衛星の取引等が盛んに行われています。民間の宇宙投資も増加しており、今後、宇宙観光旅行等民間の宇宙ビジネスへの参入が急激に増大すると予測されます。
 宇宙関連事業は、その性質上、市場が特定の一国ではなく世界全体となることも多いため、他国企業との取引が頻繁に行われています。
 また、民間宇宙活動の特殊性としては、打ち上げロケットの落下、宇宙のゴミ(スペース・デブリ)問題等、その過程で万一事故が発生した場合の損害が甚大なものになる点が挙げられます。
 我が国においては、宇宙基本法(2008年)、宇宙活動法(2016年)、衛星リモートセンシング法(2016年)が制定され、民間宇宙活動に関する立法は徐々に整備されつつある状況です。
 2017年1月に成立した当部会では、国際公法・国際宇宙法・国内宇宙法・宇宙私法・宇宙契約実務・宇宙関連紛争実務に関する定期的な研究会を中心に、宇宙法学者・宇宙工学者・宇宙事業者を招いた外部講師の招聘による研鑽、自然科学研究機構国立天文台の見学、また出版やセミナーを通じた情報発信などを予定しています。
(ご参考)会報令和2年1月号総法研だより宇宙法研究部会PDFファイル(540KB)

     会報令和3年8・9月合併号総法研だより宇宙法研究部会PDFファイル(540KB)

シェアリングエコノミー研究部会

 シェアリングエコノミーは、個人等が保有する資産等をインターネット・プラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活動であり、持続可能な社会に向けた新たな仕組みとして期待されています。当部会では、シェアリングエコノミーを巡る法律問題に関する理論と実務の研究を行っています。関連法令は、民法、商法、各種業法(住宅宿泊事業法など)のほか、労働法や競争法など多岐にわたり、ODRなど紛争解決の在り方の研究にも取り組んでいます。月1回の定例会を開き、会員が研究報告を行うほか、事業者や研究者などを招いて、勉強会や懇談会を行っています。

JP|EN