• 2017.06.20
  • 声明・決議・意見書

「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案の可決、成立を受けての会長声明

 本年6月15日、「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案が参議院本会議において可決、成立した。
 当会は、法案段階の平成29年5月11日に、同法案について慎重な検討を行うように会長声明を発出したところである。その主な理由は、「組織的犯罪集団」や「準備行為」などの定義が曖昧であり、かつ、減じられたとする対象犯罪が277と依然として広汎であることも相俟って、捜査機関の判断如何によっては、一般市民もその対象になってしまうのではないかなどといった疑念があり、未だにその疑念が払拭できているとはいえないため、立法府である国会はその疑念にしっかりと答えていくべきという点にある。
 ところが、今回の改正法は、参議院本会議の場で、同法務委員会からの中間報告を求め、同委員会での採決を省き、可決、成立させるに至ったものである。議会制民主主義の下、立法府である国会において慎重かつ十分な議論を尽くすことなく、このような拙速なプロセスによって改正法が成立するに至ったことは誠に遺憾であると言わざるを得ない。
 改正法は、早ければ来月中旬には施行される見通しであり、現に同法の廃案を求める動きがあることは当然の流れである。同法が内包する様々な問題点がある以上、少なくとも抜本的な改正を行うなどの方法によってこれらを速やかに解消すべきである。
 また、改正法が恣意的に運用されることがあってはならない。処罰の前段階である捜査機関からの逮捕、勾留、捜索差押などの令状請求に対しても裁判所の厳正なチェックが求められるとともに、改正法によって一般市民が監視下におかれ、国民の基本的人権が過度に制約されることとならないように、国民一人一人とともに捜査機関による乱用を許さないように不断に監視をしていかなければならない。

2017年(平成29年)6月20日
              第一東京弁護士会
会長   澤 野 正 明

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