• 2013.11.28
  • 声明・決議・意見書

衆議院選挙定数配分に関する1票の較差を巡る最高裁大法廷判決に対する会長声明

  本年11月20日、最高裁判所大法廷は、平成24年12月16日施行の衆議院の解散に伴う衆議院議員総選挙において、前回の平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙と同様の選挙区割りの下で行われた結果、各選挙区間の投票価値の較差が最大で2.425倍に拡大したことについて、「選挙区割りは、憲法の投票価値の平等に反する状態にあった」としながらも「憲法上要求される合理的な期間内における是正が行われなかったとはいえない」として、憲法14条1項違反とまでは判断せず、選挙無効の請求を棄却する判決を言い渡した。
  最高裁判所は、平成23年3月23日大法廷判決にて、上記平成21年衆議院総選挙において、選挙区間の投票価値の較差が最大で2.304倍に達していることについて、「47都道府県に1議席を割り当て、残り議席を人口に比例して配分する1人別枠方式が、このような選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていた」のであり、遅くとも上記平成21年衆議院総選挙当時には同方式及び同方式に基づいて定められた選挙区割りがいずれも「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた」と判断した。
  衆議院選挙で小選挙区制が導入されてから最高裁判所が「違憲状態」とする判決を言い渡したのは今回で2回目であり、二度続けて同じ判断となったものである。
  最高裁判所が衆議院選挙の違憲状態を明確に判示し、「国会は今後も1票の価値の平等を実現する努力を続ける必要がある」とした点は評価できるといえる。
  しかしながら、「違憲状態」と指摘した区割りのまま実施された選挙の効力について、今回の選挙が施行されるまでの間に1年9か月もの是正期間があったにもかかわらず、投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっている1人別枠方式を基本とした小選挙区制の選挙区割りについて、「平成23年大法廷判決を受けて成立した平成24年改正法の改正内容に沿った選挙区割りの改定には、新たな区画審の勧告及びこれに基づく別途の法律の制定を要し、本件選挙までに新たな選挙区割りを定めることは時間的に不可能であった」などを理由に、最高裁判所が立法裁量を広く認めて法改正のための合理的期間を経過していなかったと判断したことは、遅々として進まない立法府の立法作業を容認するものであり、是認しかねる。
  国民主権の下において、選挙権は極めて重要な国民の権利であり、民主主義の根幹をなすものである。しかるに三権分立の中で司法権を担う最高裁判所が、違憲状態にあることを指摘しているにもかかわらず、国会が遅々として抜本的な対応をしないために、違憲状態が長らく続いていることは、国民の人権を守るべく活動する弁護士会としては極めて遺憾に思う次第である。
 当会は、投票価値の平等の確保が、有権者の意思を公平に立法府に反映させる不可欠な要素であることに鑑みて、今後も国会に対しては、司法判断を尊重して直ちに公職選挙法等関連法を改正して、投票価値の平等を確保すべく立法措置を速やかに執ることを強く求めるものである。

2013年(平成25年)11月28日
            第一東京弁護士会 
会長  横  溝  髙  至

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