• 2013.09.26
  • 声明・決議・意見書

婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定をうけて、家族法における差別的規定の改正を求める会長声明

 本年9月4日、最高裁判所大法廷は、婚外子の法定相続分を婚内子の2分の1とする民法第900条第4号ただし書前段の規定について、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考え方が確立されてきているものということができ」、「立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的根拠は失われている」として、遅くとも平成13年7月当時において、憲法第14条第1項に違反して無効であるとする決定を行い、同規定が合憲であるとした最高裁大法廷平成7年7月5日決定を変更した。今回の決定は、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法の趣旨や子どもの権利を尊重する国際法の潮流に合致するものであり、当会は、今回の最高裁判所の決定を極めて妥当なものと高く評価する。
 これまで、日本政府に対しては、国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会及び社会権規約委員会から、婚外子の差別規定をはじめ、夫婦別姓を認めない民法第750条、女性にのみ再婚禁止期間を定める民法第733条、婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条などの民法の差別的規定について、その改正を求める勧告等が繰り返しなされてきた。
 国は、今回の違憲決定を尊重し、速やかに、本件規定を改正し、婚外子と婚内子の相続分についての平等化を実現すべきである。
 わが国では、平成8年2月26日に法制審議会から、「民法の一部を改正する法律案要綱」の答申が出されたが、この答申に沿った民法の改正はいまだに実現していない。
 当会は、社会状況・生活状況の変化や価値観の多様化を正当に受け止めて、さまざまな家族のあり方や生き方を許容する国であってほしいと願い、家族に関わる法制度や運用について調査研究活動を行ってきた。その観点から、国に対し、婚外子の差別的な法定相続分を定める規定の改正を強く求めるとともに、わが国の家族法からあらゆる差別的規定をなくすよう、速やかに民法の改正を行うよう強く求めるものである。

2013年(平成25年)9月26日
            第一東京弁護士会 
会長  横  溝  髙  至

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