• 2011.01.11
  • 声明・決議・意見書

司法修習貸与制施行延期に関する「裁判所法の一部を改正する法律」の成立にあたっての会長声明

 2010年(平成22年)11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を1年間延期する「裁判所法の一部を改正する法律」が国会で可決され、即日公布・施行された。
 これにより、既に司法修習が開始された新第64期司法修習生に対して、1年間という期限付きではあるものの、従前の制度と同様に、修習費用の給費が実施されることになった。
 この間、当会は、日本弁護士連合会及び各弁護士会と共に、司法修習費用給費制の存続を求めて、請願書の署名活動、国会議員への要請行動、市民集会・院内集会の開催等、活発な活動を行ってきた。この活動を通じ、国会議員の方々を初め、関係諸機関、市民団体、国民の皆さまに理解が得られ、今回の法改正に至ったものと理解している。請願署名については全国で約68万筆、当会のみでも約3万7千筆を集約することができた。この法改正にご協力・ご尽力くださった、国会議員の先生方、関係各位にはこの場を借りて厚く感謝申し上げる。他方で、給費制の完全復活と貸与制の撤廃を実現できなかったことは、当会を含む弁護士会の活動になお至らない点があったことを示しており、所期の目的を達するためには、司法修習の意義や給費制の重要性についてさらに国民の理解を得る必要がある。また、給費制の存続を求める活動を行う過程で、法曹志願者の経済的負担が過重になっていることや法曹志願者が大幅に減少する傾向に歯止めがかからないことなど法曹養成を巡る現在の深刻な状況が次第に明らかとなった。
 すなわち、今回の法改正は、とりあえず向後1年間、給費制を延長するものにすぎず、法曹養成を巡る現在の深刻な状況は何ら解消されたわけではない。衆議院法務委員会では、この1年間の延長期間内に、政府と最高裁判所に対し、「個々の司法修習修了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」を附帯決議している。給費制の維持・存続については、なお、道半ばであり、引き続き国民の理解を得るべく行動を続けることが必要である。
 他方、同附帯決議は、「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」とも述べている。これは、司法制度改革審議会意見書に基づき相次いで立法化された当初の制度の中には、特に法曹養成の分野で、まさに今回明らかになった「給費制を貸与制に変更する」といった、司法制度改革の理念と必ずしも整合しない部分や、司法制度改革を進める中で改善方策の実施を要するものが明らかになってきたことを踏まえた決議と理解できる。政府や最高裁判所ばかりでなく、当会、日本弁護士連合会、及び各弁護士会は、法曹養成制度の在り方全般について真摯な検討をしなければならない。
 したがって、当会は今後、給費制の存続を引き続き求めるとともに、政府や最高裁判所に対して法曹養成制度全般についての見直しを求めること、見直しのための検討機関を設けることを強く働きかけていくと共に、自ら法曹養成制度全体の在り方について検討を行い、政府や最高裁判所、国会等に対し、建設的な提言を行う所存である。
                                                          以 上

2011年(平成23年)1月11日
第一東京弁護士会
会長  江 藤 洋 一

一覧に戻る
JP|EN