• 2002.03.08
  • 声明・決議・意見書

児童扶養手当の削減に反対する会長声明

 近年、離婚の増加に伴い母子家庭が増加している。

 我々弁護士は、離婚事件等を通じて多くの母子家庭の生活実態を知る立場にあるが、母子家庭の平均年収は約229万円と全世帯平均の3分の1にすぎず、生活保護受給のボーダーライン上にあるものも多い。しかも昨今の不況によりその生活はさらに困難なものとなっている。

 このような状況下で、母子家庭に支給される児童扶養手当が、その生活の安定と子どもの健全育成に果たす役割はきわめて大きい。

 少子化社会においては、次代の担い手である子どもの養育を親の私的扶養だけにゆだねることなく、社会がその責務として一定の負担を負うことは当然であり、世代間の公平にも合致するものである。

 しかるに厚生労働省は、現在、児童扶養手当の支給額を平成14年度以降削減しようとしている。

 しかし、財政上の困難を最も弱い立場にある母子家庭へ安易にしわ寄せし、犠牲を強いることは公正とは言いがたい。

 きわめて厳しい経済状況下にある母子家庭に対し、児童扶養手当の支給額を削減することは、母子が有する憲法25条で保障された健康で文化的な最低限度の生活を営む権利や、子どもの権利条約26条が定める子どもの社会保障を受ける権利、及び27条が定める身体的、精神的、道徳的及び社会的発達のための相当な生活水準についての子どもの権利を、実質的に侵害するものと考えられる。

 よって、第一東京弁護士会は、母子家庭の生活の安定と子どもの健やかな成長を願う立場から、平成14年度以降実施予定の児童扶養手当の支給額の削減に反対することを表明する。

2002(平成14)年3月8日
第一東京弁護士会
会 長  丹 羽 健 介

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