• 2017.12.25
  • 声明・決議・意見書

民法の成年年齢引下げに伴う消費者被害に関する会長声明

1 現在、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることが検討されている。
  しかし、成年年齢の引下げにより、18、19歳の若年者に消費者被害が拡大することが予想され
 る。このため、拙速に引下げを進めるべきではなく、慎重な検討を重ねるべきである。
  仮に引下げを行うのであれば、18、19歳を含めた若年者の消費者被害に対する十分な施策を行
 うことを求める。

2 成年年齢を20歳から18歳に引き下げると、18、19歳の若年者は、親権者の同意なく単独で
 契約を締結できるようになる。もちろんそのことに利点も認められるが、一方で18、19歳の若年
 者が消費者被害に遭う危険性も拡大する。そして、その被害は看過し得ない重大なものとなりかね
 ない。
  この点、独立行政法人国民生活センターによると (注1)、全国の消費生活センター等に寄せられる
 相談のうち、18~19歳からの相談件数は毎年5000~6000件であるのに対し、20~22
 歳からの相談件数は毎年8000~9000件と急増している。実際の消費者事件においても、20
 歳になった途端に悪質事業者から勧誘を受けて被害に遭うケースが少なくない。
  成年年齢を引き下げると、18、19歳の若年者が未成年者取消権を行使することができなくなる
 ため、このような消費者被害が18、19歳の若年者に拡大することが予想される。特に、社会経験
 に乏しく、契約に関する判断力が未熟な18、19歳の若年者については、現在20歳以上の若年者
 に生じているよりも多くの被害が発生する可能性がある。
  しかも、18、19歳の若年者には、高校生であったり、進学・就職したばかりの者も多いため、
 このような若年者が消費者被害に遭えば、経済的のみならず精神的な大きな負担となりかねない。例
 えば、被害について誰にも相談できずに悩んだり、支払いのために無理なアルバイトや借入をした
 り、最悪の場合には、体調を崩して進学や就職・仕事に悪影響が出るなど、若年者の将来に重大な影
 響を及ぼしかねない。

3 成年年齢の引下げには、上記のような問題があるにもかかわらず、その問題意識が国民に十分浸透
 しているとはいえない。また、このような問題に対応するために必要な若年者の消費者被害の防止・
 救済のための施策についても、十分に検討されていない。このような現状に鑑みれば、現段階で民法
 の成年年齢を引き下げることには慎重であるべきである。

4 仮に、民法の成年年齢を引き下げるのであれば、若年者の消費者被害を防止するための十分な施策
 が行われる必要がある。必要な施策としては、次のようなものが挙げられる。
 ① 若年者取消権の創設
   消費者契約もしくは若年者層の被害が多い類型の取引(キャッチセールスやアポイントメント
  セールス、マルチ商法、エステ、インターネット取引等)について、18、19歳の若年者に固有
  の取消権を認める法改正を行うべきである。
   現存する消費者被害の回復手段は、その多くが事業者の勧誘態様などの立証を要するため、被害
  回復が困難となったり、解決に時間がかかるなど、消費者側には経済的にも精神的にも負担が大き
  い。消費者被害に遭った若年者を早期に救済するためには、一義的に明確な年齢を要件とした取消
  権を創設することが不可欠である。
 ② 与信における資力要件と審査の厳格化
   18、19歳の若年者が、クレジット契約をする際もしくは貸金業者から借入れ(キャッシン
  グ)を行う際に、資力要件とその確認方法(審査)を厳格化する法改正等を行うべきである。
   預金等の蓄えがない若年者であっても、クレジットや借入れを利用することにより、高額な消費
  者被害に遭ってしまう。このため、資力要件を厳格化し、審査段階でも自己申告ではなく根拠資料
  を求めるなど、若年者の被害を防ぐ制度が不可欠である。
   なお、上記①、②については、18、19歳に限らず、20歳以上の若年者をも対象とすること
  も検討すべきである。
 ③ 消費者教育の充実
   消費者教育推進法の趣旨に則って、成年年齢到達前の小学校・中学校・高等学校における消費者
  教育の内容及び体制の充実、成年年齢到達後の大学・専門学校における消費者教育の内容及び体制
  の充実など、質的にも量的にも抜本的な見直しを行うべきである。

  (注1)独立行政法人国民生活センターの平成28年10月27日付報道発表

2017年(平成29年)12月25日
            第一東京弁護士会 
会長   澤 野 正 明

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