• 2017.05.11
  • 声明・決議・意見書

「テロ等準備罪」を創設する法案に対して慎重な検討を求める会長声明

 現在、共謀罪の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案(以下、「本法案」という)が、閣議決定のうえで、衆議院法務委員会において審議中である。
 政府の説明によれば、本法案は、「テロ」対策のため、国連越境組織犯罪防止条約を批准する上での国内法として制定が必要であるとのことである。
 「テロ」の脅威から国民の生命や身体の安全を守ることは、国家としての重要な任務であり、世界各地でテロ事件が相次いでいる現下の国際情勢を踏まえるならば、「テロ」対策の強化が求められることは首肯できるものである。
 しかしながら、本法案に対しては、未だ多くの問題点が指摘されている。主なものは下記のとおりである。
 ①我が国では、国連の13の主要テロ対策条約についてその批准と国内法化を完了している。政府が
  掲げた「現行法上適確に対処できないと考えられるテロ事案」の事例に対しては、判例法を含めた
  現行法体系に加えて「テロ等準備罪」を立法する必要性があるのかという点について疑問視する意
  見があること
 ②政府は、対象を「テロ等組織的犯罪集団」に限定したとか、「準備行為」が処罰要件になっている
  から歯止めになると説明するが、これまでの国会審議を見る限り、その定義がいずれも曖昧であ
  り、捜査機関が恣意的に判断すれば、一般市民もその対象となる可能性があり、あるいはそれ自体
  犯罪行為といえない日常的な行為だけで準備行為とされる危険性があること
 ③対象犯罪を676から277に減じて限定を加えたとするが、減じられたとする277の犯罪の中
  には、いわゆるインサイダー取引などの会社法や経済法に関連する犯罪など「テロ」対策に直接関
  わりのない 犯罪も多く含まれており、依然として広汎なものとなっていること
 前述のとおり、「テロ」対策の強化が求められることは首肯できるものであるとしても、その規制手段(方法、内容、範囲など)は、当該法規制の目的に照らして必要かつ合理的な範囲にとどめなければならない。当該法規制の内容が漠然としていたり、不明確であったり、過度に広汎なものであった場合や法の執行について捜査機関の恣意的な判断を可能とする場合には、国民の基本的人権である思想信条の自由(憲法19条)、表現の自由(憲法21条)、さらには適正手続の保障(憲法31条)に対する重大な侵害となるからである。
 本法案については、国民の基本的人権が侵害されることにならないように、本法案がその必要性に見合ったものであるかどうか、捜査機関による法の執行への十分な歯止めの仕組みがあるのかどうか、さらには、包括的に長期4年以上の懲役・禁錮に当たるものとして277に及ぶ犯罪が対象となっていることについて依然として広汎に過ぎないのかどうかなどの点がさらに慎重に検討されなければならない。
 以上の諸点について、多くの国民の納得が得られるよう、さらなる慎重審議を要請する。

2017年(平成29年)5月11日
              第一東京弁護士会
会長   澤 野 正 明

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