• 2012.06.20
  • 声明・決議・意見書

社会保障・税共通番号制法案に対する反対の声明文

 政府は、去る2月14日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(いわゆる「社会保障・税共通番号制法案」。以下「本法律案」という。)を閣議決定し、国会に提出した。本法律案は、全ての国民と外国人住民に対して、社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号(マイナンバー)を付けて、これらの分野の個人データを、情報提供ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度を創設しようとするものである。
 本法律案は、行政効率化の名目下に、税務、年金、労働保険、健康保険、生活保護、介護保険といった個人情報を関係諸機関が同一の整理番号(マイナンバー)で分散管理しつつ、必要に応じて相互に利用しやすくする仕組みであり、個人の経済生活や健康状態などを容易に把握、結合できるようにするものである。
 本法律案の最大の目的は、正確な所得把握とされているが、その具体的方法は法定調書に共通番号を記載するというものに過ぎず、現状より多少改善される可能性があるという程度のものに過ぎない。事業者の所得を正確に捕捉することはほとんど不可能である上に、海外での資産運用については全く捕捉できないから、正確な所得捕捉にはほど遠い。
 他方、共通番号は、目にみえるものとして、「民(個人)⇒民(事業者)⇒官(税務当局)」と伝わることになっているので、だれもが他人の共通番号を知ることができる。しかも、生涯不変を原則とするので、一旦、他人の共通番号を知れば、同一の共通番号で管理されている個人データは同一人のものであると知ることができる。したがって、共通番号をキーにして個人データを集積すれば、本人の知らない間に、特定の個人の経済生活や健康状態などを分析することも簡単にできるようになる。プライバシー侵害の危険性はきわめて高いものである。
 ところが、我が国では、このようなプライバシー侵害を実効的に予防するための第三者機関が設けられていない。本法律案では我が国で初めて第三者機関の設置を盛り込んでいるが、どこまで実効的に権限行使が行われるか不明であるし、保護の対象となるのは共通番号付きの個人データに止まるから、共通番号を外した個人データの保護には役立たない。
 加えて、国民の本法律案の認知度は極めて低く、国民がこのような制度を求めているかどうか極めて疑問である。しかも、本法律案の制度を構築するためには7000億円以上の費用を要するとも言われており、東日本大震災からの復興途中の現在、本法律が真に国民にとって必要か否か、十分な議論が必要である。
 以上より、当弁護士会は、看過しえない重大な問題を含む本法律案に強く反対するものである。

以上

2012年(平成24年)6月20日
第一東京弁護士会                  
会 長  樋口 一夫

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