• 2023.05.08
  • 声明・決議・意見書

再審法改正に関する会長声明

 袴田事件に関する第2次再審請求事件につき、本年(2023年)3月21日、検察官は東京高裁決定に対する特別抗告を断念し、再審開始決定が確定した。この検察官の判断は、当会の3月13日付け声明を含む多数の弁護士会の声明や、社会各層から発せられた意見に応じたもので、この点は評価できる。
 しかし、その後、静岡地裁で開かれた再審公判に向けた三者打合せにおいて、検察官は、立証方針を決めるまで3か月が必要であると申し出た。これは、袴田事件のこれまでの経緯、東京高裁の決定内容のほか、袴田巖氏の年齢を考えると、余りに不適切な対応である。再審公判を遅滞なく進行させ、袴田氏に早期に無罪が宣告されるべきである。検察庁は、速やかに有罪方向の立証を断念し、無罪論告を行うよう求める。

 また、3月13日付け声明でも述べた通り、袴田事件は、現行の再審法制の不備を示す象徴的な事件であり、えん罪による犠牲者を救済するために、早急に法改正を進めるべきである。
 再審請求審における証拠開示の規定を整備する必要性が高いことは、同声明で具体的に述べたとおりである。一方、適切なルールに基づき証拠開示を認めることによる弊害は、特に考えられない。それにもかかわらず、証拠開示規定の整備がなされないままでいることは、本件の東京高裁決定が、捜査機関による証拠のねつ造の可能性を指摘したことを考え併せると、捜査機関による違法・不当な活動を隠ぺいすることにつながりかねない。
 さらに、再審開始決定に対する検察官による不服申立てが不当であることは、同声明でも具体的に指摘したとおり、本件の経緯が雄弁に物語っている。

 以上のとおり、当会は、袴田事件の再審開始が確定したことにより、えん罪による犠牲者が未だに存在し、それがいかに苛酷な状況であることに、社会の目が広く向けられている現時点において、再審法制の整備に向けた第一歩を踏み出すべきであるとの決意を、改めて表明する。

2023年(令和5年)5月 8日
第一東京弁護士会
会長 菰田 優

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