今年の2月中旬頃から新型コロナウイルスに関するニュースが連日報じられ,政府からは,学校の臨時休校の要請やテレワークの推奨など,感染拡大予防のために人が集まる機会を控えるようにとの呼び掛けがありました。
このような状況の中,会社から自宅待機を指示された場合,労働者は何の手当も受けられないのでしょうか。
労働基準法では,「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合,使用者は,休業期間中,平均賃金の6割以上の手当を労働者に支払わなければならない(休業手当)」とされています(第26条)。そのため,労働者が新型コロナウイルスに感染しているわけではなく,会社の判断で自宅待機を指示された場合には,会社に対して休業手当を請求することができます。しかし,労働者が感染している場合には,自宅待機が使用者の責めに帰すべき事由とはいえませんので,会社に対して休業手当を請求することはできません。その場合,感染が業務に起因して生じたといえるときは,労災保険による休業手当を受け,起因したか不明なときは,健康保険による傷病手当を受けることができます。
ただ,いずれの場合であっても収入は減少します。また,会社にとっても売上が減少した上,労働者に休業手当を支払わなければならないとすると,経営は圧迫され,会社存続の危機にさらされかねません。今回の原因はウイルスなので,完全に無くなることはないでしょうが,このような異常事態が1日も早く収束して,元の生活・社会に戻ることを願います。