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第二十五回渋谷法律相談センターコラム「遺言作成後の生活を見据えた遺言作成を~遺言書作成後の生活状況の変化~」(前編)

1 平成27年に相続税が増税されてから、遺産分割の事件が増えてきているという話を聞くことがありますが、筆者個人の実感としては余り変化が無いような気がしています。ただ、最近、弁護士などが関与しなかった遺言書の問題を何件か相談されました。遺産相続の争いを防ぐために、あらかじめ遺言書を作成するという方法が少しずつ浸透しているのかも知れません。それはそれで良いことだと感じています。

2 さて、受けた相談の内容は、いずれも遺言書に明確に記載されていない財産の処理についての相談でした。遺言書を作成したあとで、ある財産を処分して、新たに別の財産を獲得した場合のその新たな財産がどのように処理されるか、という問題でした。

たとえば、自宅の不動産を長男に相続させるという遺言書を作ったあとで、その自宅を遺言者が処分してしまい、遺言者がその処分金で株式(有価証券)を購入したところ、遺言者が亡くなって相続が発生したとします。長男以外の相続人がいる場合、その株式(有価証券)は、自宅不動産と同様に長男が遺言に基づき相続できるのか、という問題です。もし、その株式(有価証券)が遺言の対象でなければ、相続人全員による遺産分割の対象となり、遺産分割が順調に整わなければ、遺産分割の審判を家庭裁判所に求めなければなりません。そうすると、遺産分割を経ないで相続問題を解決するという遺言書のメリットが減殺されてしまうことになりかねません。

3 この問題は、遺言の文言解釈の問題とされるもので、遺言の内容をどのように解釈して、誰に何が帰属するかをどう判断するかという問題です。

この点について、抽象的には、最高裁判所が判決で、「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言書の置かれていた状況等を考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべきものである」(最二小判昭和58年3月18日、家裁月報36巻3号143頁、判例時報1075号115頁など)とされています。(下線は筆者記載。)

この判決は、具体的には種々の状況などを勘案して定めるというのですが、結局「具体的な基準は無い」といっているようで、やむを得ないのかも知れませんが、筆者などは、はぐらかされたような気分になってしまいます。

そして、実際にはどのように解釈するかは、意外と困難です。特に、一般の個人の方が自筆証書遺言をもって遺言を作成する場合には、法律上の問題など意識されていませんから、非常に厄介な問題となります。

【後編に続く】