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第八十三回渋谷法律相談センターコラム「最高裁の違憲判断」

多様性を意味するダイバーシティ(Diversity)という言葉を耳にすることが多くなりました。恥ずかしいことに、2015年頃、渋谷区のパートナーシップ制度に関連して初めて「ダイバーシティ」という言葉を聞いたときは、お台場にあるレジャー施設の「ダイバーシティ」(Diver City)のことを連想しました。最近では、「ダイバーシティ」という言葉を頻繁に耳にするので、そのような勘違いをすることはないと思います。

ダイバーシティ(=多様性)の言葉はいろいろな場面で使われています。渋谷区のパートナーシップ制度は、戸籍上の性別が同じである二人につき「パートナーシップ」の関係であることを証明する制度であり、性自認や性指向という性に関する多様性を尊重する制度として、全国のさきがけとなった制度です。

戸籍上の性と自分が自認する性とが違っている人のことを「トランスジェンダー」といいます。「トランスジェンダー」のことを、法律では「性同一性障害」と定義したうえで、「性同一性障害」の人が戸籍上の性別を変えることができる手続が定められています(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)。2023年10月25日、最高裁判所は、この法律が、性別の変更をするために生殖不能であることを要件としていることを、憲法違反であると判断しました。最高裁が違憲の判断をするのは、戦後12例目です。最高裁は、2018年には同じ要件について合憲の判断をしていたものの、その後の医学的知見の進展(国際疾病分類では「性同一性障害」から「性別不合」に変更されました)や社会状況の変化を理由として、今回の違憲判断をするに至っています。

社会状況の変化を受けて、最近では民法の改正も多くなされています。相続については、配偶者に相続財産である建物への居住権を認める改正がなされたり、寄与分や特別受益に関する主張を10年間に制限する改正がなされたりしています。家族法の分野でも、女性の再婚禁止期間が廃止されたり、無戸籍の子どもが生じる理由になっていた嫡出否認制度の改正がなされたりしています。また、現在は、離婚後の親権者を父母どちらかの単独親権から父母の共同親権にする改正も検討されていて、いずれは改正がなされる見込みです。さらに、夫婦同氏制度を違憲であると主張する裁判も多く提起されています。最高裁はこれまで夫婦同氏制度を合憲とする判断をしてきています。しかし、この判断も社会状況の変化によっては変わるかもしれません。

このように社会状況の変化に応じて、家族関係や相続に関する法律は改正がなされることが多いので、困ったとき、わからないときには、迷うことなく法律相談を受けていただくのが良いと思います。