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第八十回渋谷法律相談センターコラム「不動産の放棄はできない?」

 価値のない不動産が「負」動産などと表現されることは少なくないと思いますが、人口減少のわが国、高騰する東京の不動産とは裏腹に、特に過疎地域を中心として、不動産は要らないよ!という声が聞かれることは少なくありません。

 不動産は保有し続けることで原則として固定資産税を負担しなければならないことから、放棄に対するニーズは強い反面、法律上、放棄をすることは定められていません。あくまで誰かに引き受けてもらうか、継続的に保有するかが原則的な形態です。

 例外的に、相続放棄という手続きを行うと、亡くなった方の相続をしない結果、その方が保有している不動産を引き継がず、放棄するということに近い効果を得ますが、管理義務(民法940条)が残ることもあり、完全に放棄することはできません。

 そのような中、自分で取得した土地については自己責任での処分が必要になるものの、図らずも相続した土地について、「遠くに住んでいて利用する予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいニーズに応えるため、相続等によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。

 制度を利用できる方は、原則として相続人又は遺贈により土地を取得した者ですが、相続により取得した土地が共有持分に留まる場合でも、共有者全員が共同申請することで、本制度を利用することが可能です。

 ただし、相続に拠らず、例えば購入や贈与を受ける等して取得した土地については利用できません。また、対象となるのは土地のみであり、建物は対象となりませんので、建物付きの状態では制度利用ができず、また抵当権などがついている状態でも同様にできません。

 新たに制度ができたものの、まだまだ使い勝手に問題がありそうな新制度、そもそもの趣旨が、相続人等の救済ではなく、所有者不明の土地が生じることを避けたいという国の方針が背景にあります。そのため、本制度の実施と併せ、相続登記の申請義務化も定められました。同義務化は令和641日施行予定ですが、メリットと義務は表裏一体、ということも言えるかと思います。

 制度の詳細はこれから実務が蓄積していくことになると思われますが、不動産が関係するご相談がある場合には、お気軽に弁護士宛ご相談ください。