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第七十三回渋谷法律相談センターコラム「職場でのパワハラについて」

 職場の上司からパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます。)を受けて困っているといったご相談を受けることがあります。

 職場におけるパワハラとは、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものであり、これら3つの要素をすべて満たすものをいうとされています。

 そのため、上司から部下に対する行為がパワハラと認識されることが多いようですが、同僚同士であっても何らかの優位性を背景に相手に苦痛を与える行為をすればパワハラになりますし、部下の上司に対する行為がパワハラになるということもあり得ることになります。

 かつて、日本の企業では従業員を教育する過程において、厳しい発言を内容とする叱咤激励があったとしても、それは必要な行為であるという認識がされていたため、パワハラが問題と認識されてこなかったのですが、近時では、従業員の教育方法についての考え方に変化がみられるようになり、社会問題として認識されるようになってきました。

 かくして、各企業では、パワハラ対策を行う必要性が認識されてきたのですが、その後もパワハラの事例は問題となり続ける状況となっています。

 こうした状況を受けて成立した労働施策総合推進法は、職場におけるパワハラへの対策として、(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発、(2)相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、(3)職場におけるハラスメントの事後の迅速かつ適切な対応、(4)パワハラを相談した者のプライバシー保護、及び相談をしたことを理由とする不利益扱いの禁止を事業主に義務付けております。そして、上記義務は、従来は大企業を対象としたものでしたが、2022年4月1日から中小企業にも対象が拡大されております。

 また、パワハラを受けた者は、これを行った者の行為により精神的苦痛を受けていますし、暴行などを受けている場合にはケガという損害を受けているため、民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を加害者に対して請求をすることが可能となります。また、直接にパワハラを行った従業員だけでなく、従業員を雇用する会社もまた使用者責任として従業員とともに損害賠償責任を負う場合もあります。

 労働施策総合推進法の適用の拡大によりパワハラ対策の拡充が各企業で行われることになりますが、それでもなお企業内で解決しえないパワハラ事例の発生も想定されます。

 弁護士会の法律相談では、パワハラ事案に対するご相談を受け付けておりますので、ぜひご利用をいただければと存じます。