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第七十一回渋谷法律相談センターコラム「相続が発生した後に誰も管理しなくなった不動産をどうする?新制度の紹介」

 法律相談を担当しておりますと、昨今、「父母もなくなり田舎の土地建物がそのままになっているが、建物の老朽化で近隣に迷惑をかけないか心配だ」「だれも住んでいない田舎の土地の税金を支払えという連絡がきたが、自分は相続したわけではない」というような、だれも管理しなくなってしまった土地建物に関する相談がよくあります。

 このようなことは、相続人が遺産分割協議や相続登記を行わないままになってしまったことが原因と考えられます。

 被相続人が亡くなったとき、遺言がある場合は、それに沿って相続を行うことになるでしょうが、ない場合は、相続人間で遺産分割協議を行わないと、「遺産共有」という、相続人が相続財産を共有する状況が続いてしまうことになります。

この共有者の中に誰も相続不動産の利用・管理を行うものがいない場合は、相続財産であることの意識が希薄のまま、登記も相続人名義とならないままに放置されてしまうことがままあります。

相続登記がなされないまま、さらにその相続人が亡くなり......ということが続くと、一つの土地の共有者が数十人となってしまうこともあり、そうなるとそもそも遺産分割協議を行うことも登記をおこなうことも事実上困難となってしまうのですが、このような状態になってしまった不動産は、全体の2割程度に及ぶのではないかという試算もあるほどです。

このような事態の増加を防ぐために、各種法改正がなされ、来年以降施行されることとなりましたので、簡単に主な制度を紹介します。

まず、相続発生後も放置され続けて現在の所有関係が分からなくなることの対策として、相続人がその相続による所有権の取得を知った時から3年以内に、相続登記を申請すること、および転居時の新住所の登記申請が義務付けられます。

また、放置されている土地に関しての管理がより行いやすくなるためにも制度が改正されます。主だった制度は

①相続開始から遺産分割がされないまま10年を経過すると、遺言のない場合の遺産分割の方法が法定相続分を原則とする改正や、代償金を供託したうえで、ほかの相続人の共有持分を取得することができる改正がされます。他の相続人との連絡が取れない場合等の分割が容易になることが期待されます。

②共有物の利用に関して、「変更」に当たる場合には共有者全員の同意が必要であるところ、軽微な「変更」に関しては持ち分の過半数で行えるように改正されます。この「全員」「過半数」の算定についても、特定の場合に裁判所の決定があれば、意向が明らかな共有者の全員・過半数ですむように改正されます。

③現在は、隣の土地に生えている樹木から越境している枝がある場合、自ら切ることができず、樹木の所有者に切ってもらうしかないのですが、樹木の所有者に切るよう催告しても相当の期間内に切除しないときや、所有者が不明である場合・急迫の場合には、自ら枝を切ることができるように改正されます。

④所有不明者土地の管理者の選任が簡易な方法でされる制度が創設されます。

さらに、実際に相続することになった相続人が、その相続不動産を管理しきれないような場合などに、法務大臣による承認を経て、10年間の管理費を支払うことで対象不動産を国庫帰属させることができる、という制度も創設されます。

このように、相続によって管理不全となる不動産を減少させるための制度が多く改正・創設されることとなりましたが、これらの制度については、過去の相続についても対象となるものがあります。先述の通り、対象となる不動産の数が膨大にわたっているうえ、裁判所の許可を要する制度などもあるため、運用がどのように行われていくかについて、施行後の動向を注視する必要があります。

ここでは簡易な説明にとどめましたので、相続によって管理できないような不動産を相続することになった場合等は、ぜひ法律相談をご活用いただければと思います。

(参考:法務省ホームページ https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html