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第五十六回渋谷法律相談センターコラム「配偶者居住権」

平成30年度の民法改正において、相続に関する条文が一部改められ、配偶者居住権という制度が新たに設けられることになりました。

この制度については、既に昨年4月1日より施行がされており、すでに運用が開始されています。

そこで、この配偶者居住権について、その概略をご説明したく思います。

たとえば、夫が死亡し、その相続人となった妻は夫が所有していた建物に居住をしていたが、夫の死亡後も上記建物への居住を続けることを希望するような場合、改正前の民法では、遺産分割において建物の所有権を取得する、あるいは、建物の所有権を相続により取得した他の相続人から賃借するなどといった対応をとる必要がありました。

しかし、建物を遺産分割において取得するとなると、不動産は概して高額であり相続財産の価額中において高い割合を占めることが多いことから、遺産のうち預貯金等の金融資産の相続を事実上あきらめざるを得ず、結果、その後の生活のための資金が不足してしまうという問題がありました。また、建物の所有権を他の相続人が取得した場合、この相続人が妻に対して賃貸することに同意しないときには建物を借り受けることができませんから、妻が建物に居住ができないということも起こり得ます。

今回新たに設けられた配偶者居住権は、被相続人が死亡したとき、その相続人である配偶者が、被相続人の死亡後も被相続人の所有していた建物に無償で居住をすることができるという権利であり、従前と同じ建物での居住の継続しつつ、生活の資金の確保をしたいという配偶者の希望を叶えることができる制度となります。

もっとも、この配偶者居住権は無条件に認められるものでは無く、下記のような条件を満たす必要があります。

(1)被相続人の死亡時において、配偶者居住権の対象となる建物が被相続人の単独所有、あるいは配偶者との共有であったこと

(2)配偶者が、被相続人の死亡時に、配偶者居住権の対象となる建物に居住していたこと。

(3)配偶者居住権の対象となる建物について、配偶者居住権を取得する旨の遺産分割、遺贈又は死因贈与がされていること

なお、配偶者居住権自体は無償で建物に居住をすることができる権利ですが、相続財産の一部を構成するものとして扱われますため、この権利を取得する配偶者は、自身の具体的相続分から「配偶者居住権の財産評価額」を控除した残額について遺産を取得することになるということになります。そのため、配偶者居住権の取得それ自体が無償というわけではないということには注意が必要です。

配偶者居住権について具体的にお尋ねされたいことがおありの方は、法律専門家にご相談をされることをお勧めします。