震災関係 Q&A
- 10の2.原発(事例編)
質問一覧
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10の2-1【損害賠償請求の方法】
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10の2-2【東京電力送付の請求書類】
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10の2-3【原子力損害賠償紛争解決センター】
原子力損害賠償紛争解決センターとは、何ですか。
この解決センターに和解仲介の申立をすると、解決までにどのくらいの時間がかかりますか。また、申立をすると、必ずセンターに出頭しなければなりませんか、手続きも教えてください。 -
10の2-4【原子力損害賠償紛争解決センターへの申立と裁判との関係】
原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立をしないで、いきなり裁判を起こすことはできますか。原子力損害賠償紛争解決センターに申立をすると、裁判をすることができなくなりますか。原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介と裁判とを同時に利用することはできますか。
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10の2-5【仮払法に基づく仮払金】
国が、仮払金を支払ってくれると聞きました。原発事故によって発生した損害なら、どのような損害でも、全額、東京電力に代わって、支払ってくれるのですか。また、請求の方法を教えてください。東京電力に対する損害賠償請求との関係も教えてください。
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10の2-6【各解決手段のメリット、デメリット】
東京電力に対する請求の手段として、複数の方法があるのであれば、どれを選ぶのが適切か考えたいと思います。申立に要する費用や時間、手続きの煩雑さ、効果、その他、それぞれの手続きのメリット、デメリットを教えてください。
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10の2-7【定期金賠償】
いつまで仕事ができないのか分からないので、東京電力に、毎月、決まった金額を支払ってもらいたいと思っています。このような損害金の請求は、可能ですか。
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10の2-8【和解後に発生した損害の請求・消滅時効】
原子力損害賠償紛争解決センターで、和解が成立した後に発生した損害は、もう東京電力に損害賠償請求することはできないのでしょうか。
東京電力に対する損害賠償請求の時効について、教えてください。 -
10の2-9【生活保護と賠償金との関係】
私は生活保護を受けています。東京電力から賠償金を支払ってもらった場合、生活保護費の返還を求められたり、生活保護が打ち切られることがありますか。生活保護費を返したり、生活保護を打ち切られるおそれがあるなら、私は、東京電力に損害賠償請求をしたくありません。
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10の2-10【災害弔慰金、義援金、被災者生活再建支援法による支援との関係】
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10の2-11【損益相殺】
地震や原発事故を理由として、災害弔慰金や義援金、お見舞金を受領した場合、東京電力に対する損害賠償金が減額されることはありますか。地震や津波による建物倒壊を理由として損害保険金を受け取っていた場合、地震・津波で怪我や体調を崩して入院し、生命保険金を受け取った場合は、どうでしょうか。県からの助成金は、どうでしょうか。
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10の2-12【避難後の身体的疾患と原発事故との因果関係】
原発事故後、避難指示に従って、避難所に避難しました。避難所生活のストレスもあってか、夫は、急に心筋梗塞を起こしました。一命はとりとめたものの、不整脈等の後遺症が残って継続的な通院が必要となり、まともに働けません。夫の心筋梗塞と、その後遺症による損害を東京電力に請求することができますか。どのような損害を請求することができますか。
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10の2-13【PTSD】
福島県内に住んでいます。原発事故後、不安感が増し、不眠が続き、テレビで原発事故の映像を見ると、自然と涙が出てくるようになりました。原発事故後6か月を経過しても、この症状は治まりません。私は、東京電力に、損害賠償請求することができるのでしょうか。
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10の2-14【うつ病悪化と原発事故との因果関係】
原発事故前からうつ病に罹患し、通院していましたが、原発事故後うつ症状が悪化し、働けなくなりました。東京電力に損害賠償請求できますか。
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10の2-15【自主避難者(福島県内に在住)の場合】
福島県内(避難区域外)で生活していましたが、5歳、3歳の子への影響が心配で、夫は福島に残って仕事をし、私は、子どもらと一緒に東京に避難してきました。二重生活のため家賃はかさみ、夫が東京に会いに来る交通費もかなり負担になっています。このままでは、家族がばらばらになってしまうのではないかと不安に思っています。東京電力に、どういう損害を賠償請求できますか。
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10の2-16【自主的避難者(福島県外に在住)の場合】
横浜市でも、空間放射線量が高い場所があると聞き、全く縁はありませんでしたが、子どもと一緒に九州に避難し、新しい生活を始めました。九州に避難する際にかかった交通費や引っ越し費用を東京電力に請求することができますか。慰謝料は請求することができますか。
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10の2-17【放射線量が比較的高い地域に残った場合の慰謝料と発病した場合の因果関係】
私の周囲でも、福島県外にたくさんの方が自主避難しましたが、私には避難できるだけの余裕がないため、福島県内での生活を続けています。自主避難者に損害賠償請求が認められるなら、残って生活している者にも、慰謝料が認められるべきだと思いますが、難しいのでしょうか。
もし、このまま福島県内で生活を続けて、病気を発症した場合、東京電力に損害賠償請求をすることができますか。 -
10の2-18【妊娠中の場合】
現在、妊娠8ケ月です。妊娠初期に避難区域にいて、原発事故に遭遇し、避難しました。
もし、これから生まれてくる赤ちゃんに異常や障害があると分かったとき、私は、慰謝料等を請求することができますか。
また、私自身、これから生まれてくるお腹の赤ちゃんに障害が生じないか、不安な日々を送っています。この不安について、東京電力に対して慰謝料の請求をすることができないでしょうか。 -
10の2-19【原発事故後のストレスとカウンセラー費用】
私が住んでいる地域は政府の避難等の指示等の地域に指定はされていませんが、その付近に住んでいるため、原発事故後、小学生の子どもを外で遊ばせることができないと思うようになり、また、食品にも気を使っています。母親である私は、イライラし、余裕がなくなったためか、子どもは甘え、そんな子どもを煩わしいと思うようになりました。夫に勧められて、私は、カウンセラーを受けるようにしました。カウンセラーの費用は、東京電力に損害賠償請求することができますか。
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10の2-20【避難区域の営業損害等の終期と定期金賠償】
避難区域内の営業損害、就労不能等の損害は、いつまで認められるのですか。継続的に発生する損害は、どのように東京電力に請求していくのが、適切でしょうか。
警戒区域や計画的避難区域は、戻ることができないと認められるまでは、毎月請求していったほうがよいか。 -
10の2-21【商圏喪失による損害】
福島市内で幼稚園を営んでいましたが、園児が自主避難したため、幼稚園の経営を維持できなくなりました。私は、東京電力に、損害賠償を請求することができるでしょうか。
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10の2-22【緊急時避難区域解除と損害賠償】
9月30日に緊急時避難準備区域が解除されました。すぐに自宅に戻ってしまうと、戻った後には、損害賠償は認められなくなりますか。解除後、いつまで、損害賠償請求が認められるのでしょうか。
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10の2-23【風評被害(報道機関やイベントの主催者に対し)】
ある地域で、東日本大震災の復興を応援しようと、福島の花火業者が生産した花火の使用を計画していたが、市民からの抗議があり、放射線量に関するデータの提出も間に合わなかったため、他の地域で生産された花火を使うことになったという報道を見ました。広く報道されたため、この花火業者だけでなく、福島県内の事業者に関し、新たな風評被害が生み、同じ福島県内の事業者としては、腹立たしく思っています。福島県内で事業を営む者は、報道機関に対し、損害賠償請求や、もう報道しないでくれと請求することはできるでしょうか。
なお、本件で、花火の主催者に、損害賠償請求することができるのでしょうか。それとも、東京電力に損害賠償請求することになるのでしょうか。 -
10の2-24【風評被害の終期】
震災から一定期間が経過しましたが、今でも、福島県産のみならず、茨城県産、栃木県産、群馬県産の野菜というだけで、売れません。この被害について、東京電力に、いつの時点の損害まで請求することができますか。また、すべての被害が明らかになってから請求すべきなのでしょうか。
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10の2-25【不動産の価値の喪失又は減少と判断できる時期】
まだ、原発事故は収束していませんが、現時点で、不動産の価値の喪失又は減少を理由とした損害賠償請求をしても、認めてもらえるでしょうか。
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10の2-26【不動産の価値の評価方法】
不動産の価値は、どのような方法で評価するのですか。例えば、単に土地の時価というだけではなく、農地などの場合には作物を生産できるという付加価値がある場合、付加価値分を土地の時価に上乗せしてもらえるのでしょうか。
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10の2-27【不動産の全損の賠償と避難費用、固定資産税との関係】
東京電力から、自宅の全損分の損害賠償の支払いを受けた後は、自宅に住めないことによる避難費用を損害賠償請求することはできなくなるのでしょうか。
また、東京電力から自宅の損害賠償請求を受けた後は、東京電力の所有になるのでしょうか。もし、自宅の名義は、私のままだと、固定資産税は、ずっと私が払っていなかければならないのでしょうか。固定資産税相当額は、損害になりますか。火事が出るのも心配です。 -
10の2-28【動産の価値の評価方法】
避難区域内の自宅に着物が残してありますが、もう着ることはできません。母の形見の着物もあります。東京電力に損害賠償請求をしたいのですが、請求するには、どういう資料が必要ですか。また、どのくらいの金額が認められますか。
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10の2-29【ペットの死亡】
避難区域からペットを連れてくることができず、一時的に家に戻ったら、かわいがっていたペット(犬)が餓死していました。東京電力に損害賠償請求をしたいのですが、どのくらいの金額が請求できますか。
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10の2-30【未回収の売掛金の賠償請求】
原発事故で、得意先が破たんしたため、売掛金が焦げ付きました。焦げ付いた売掛金相当額を、東京電力に損害賠償請求することができますか。
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10の2-31【損害賠償金に対する課税】
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10の2-32【必要経費を補填するための賠償金と課税】
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10の2-33【事業の減収分に対する賠償金と課税】
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10の2-34【給与等の減収分に対する賠償金と課税】
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10の2-1【損害賠償請求の方法】
東京電力に損害賠償請求をするのに、どのような方法がありますか。
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東京電力の原子力事故による損害に対する賠償は、不法行為に基づく損害賠償請求であり、損害賠償を受けるためには、以下の方法のいずれかを選択することができます。
① 東京電力に直接請求し、相対交渉する方法
② 原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立をする方法
③ 裁判所に調停の申立をする方法
④ 裁判所に民事訴訟を提起する方法
⑤ 「平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律」(以下、「仮払法」と いう。)に基づき、県を通じて国に仮払い請求をする方法
なお、東京電力に対する損害賠償請求権を被保全債権として、本案訴訟による解決を待っていては日常生活を維持できない程度に困窮していることを疎明して、賠償金の仮払い仮処分を申立てることにより、早期に賠償金の一部の支払いを受ける方法も考えられます。
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10の2-2【東京電力送付の請求書類】
東京電力から、請求書類が送られてきました。どのように書いたらよいですか。また、注意するべき点を教えてください。
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1 請求書の概要 平成23年12月15日現在、東京電力が賠償する損害は、平成23年3月11日の原子力事故発生から同12月31日までに発生した損害を対象としており、請求書類は、個人に係る損害と、法人及び個人事業主に係る損害の2つに大別されます。個人に係る損害は、政府等の指示で避難を余儀なくされた際の避難費用や帰宅費用(交通費、宿泊費、除染費用など)、生命・身体的損害(医療費など)、就労不能に伴う損害、避難生活等による精神的損害、検査費用(人・物)などがあり、交通費は、県内での移動は原則として1回につき1人5000円、宿泊費は原則実費で1人1泊当たり8000円を上限とし、実際に使った金額が基準を超える場合は事情を確認した上で支払額を決めることになっています。また、精神的な損害には月額10万円などが、避難によるけがや病気の医療費は実費が、避難による就労不能に伴う損害は、事故以前の収入と現在の収入の差額などが支払われることになっています。なお、請求書類は、平成23年9月までの分は、現在、(東京災害支援ネット資料室のウェブサイト)で入手することができます。 他方、法人及び個人事業主に係る損害に関する請求書類は、損害項目ごとに以下の11種類に分かれており、政府による避難指示等に係る損害は、営業損害や検査費用の実費などが、政府等による出荷制限指示等に係る損害については、減収による営業損害のほか放射能検査費用や廃棄費用等の費用の実費などが、風評被害や間接被害についても、減収による営業損害のほか放射能検査費用の実費などが支払われることになっています。
種類 損害項目 法人・個人事業主用(避難等対象区域内) 政府による避難指示等に係る損害 農業者用(避難等対象区域外) 政府等による農産物等の出荷制限指示等に係る損害及び風評被害(茶及び畜産物を除く) 加工・流通業者用(出荷制限指示等) 政府等による農林水産物等の出荷制限指示等に係る損害(農林水産物の加工業・食品製造業及び流通業者用) 加工・流通業者用(風評被害) 風評被害(農林水産物の加工業・食品製造業及び流通業者用) 観光業者用A 風評被害(福島県(避難等対象区域外)、茨城県、栃木県、群馬県内) 観光業者用B 風評被害(外国人観光客の解約) 製造業者用 風評被害(製造業者用) サービス等業者用 風評被害(サービス等業者用) 輸出用 風評被害(輸出用) 間接被害用 間接被害(原子力事故により第一次被害が生じたことにより、第一次被害者と一定の経済的な関係にあり、当該経済的関係に代替性がない第三者に生じた被害) その他の請求用 その他損害 2 請求書を作成する際の注意点
東京電力から送付された当初の請求書類は、請求書部分が約60ページ、説明書類は約160ページと膨大なもので、その内容は極めて複雑かつ煩雑なものでした。平成23年9月1日から平成23年11月30日までの個人に係る損害の請求書類は、34頁に削減する等改善がなされました。しかし、3か月に1度の賠償という仕組みは変わりませんので、今後も3か月毎に同様の 請求書類を作成する必要があることが予想されます。
請求書類の作成にあたっては、以下の東京電力のFAQ をご参照ください。
これまでの対応について批判を受け、東京電力は、請求書の書式や請求方法、基準の見直しがなされています。
疎明資料として領収書等の原本の提出が求められているため、今後、他の救済機関を利用した東京電力への賠償請求を行う場合、資料提出に支障を来たす恐れがあります。このため、東京電力に原本の返却を求めたり、原本を要求されない書類については控えを添付するなどの措置を取る必要があります。
疎明資料がない場合でも、標準金額を支払うという扱いになっていますので、安易に請求を断念しないように注意してください。
また批判の多かった、観光業者の減収分の20%を原発事故以外の要因による減収分として除外するとの扱いも、10月26日に見直しがなされ、平成23年3月11日から5月31日までを売上減少率20%とし、同年6月1日以降は売上減少率をゼロとするか、平成23年3月11日から同年8月31日までの売上減少率を10%とし、同年9月1日以降はゼロとするかのいずれかの選択ができるようになりました。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11102606-j.html
さらに、避難生活等による精神的損害の見直しもなされ、平成23年11月24日のプレスリリースで、平成23年9月1日から11月30日までの精神的損害として、月額5万円から、月額10万円または12万円を変更されています。
http://www.tepco.co.jp/comp/index2-j.html
また、「ご請求簡単ガイド」の配布や、訪問相談も開始しましたが、今回の請求書類は、「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下、「中間指針」と言います。)で認められている損害が全て賠償されるわけではないことにも注意が必要です。例えば、現在の請求書類では、原子力被害によって使用できなくなった土地や住宅等の財産価値の減少分の補償は請求できないため、別途請求手続きを取る必要があります。また、風評被害を最小にとどめるために事業者が努力して実施した風評被害対策に要した費用(追加的費用)は賠償の対象とされておらず、これらの賠償を受けるには、別途請求手続きを取る必要があります。東京電力は、今後、こうした追加的費用も賠償の対象にするとしています(福島県の公開質問書に対する東京電力の回答書 参照)。
そして、修正後の合意書には、「上記金額の受領以降は、結果通知書記載の各金額及び本合意書記載の各金額について、一切の異議・追加の請求を申し立てることはありません」との表記はある上、「上記算定明細書記載の各補償項目のうち、***のある項目は本合意の対象外です。」と記載されていますので、合意の対象外となる事項を明記する必要があり、注意する必要があります。但し、合意書に署名し、一度返送をしても、やむを得ない事情により請求漏れがあった場合には、追加請求の相談に応じるとされていますので、追加請求の必要が生じた場合には、安易に諦めることなく、必ず東京電力又は弁護士等の専門家にご相談ください。
以上のとおり、東京電力に対し請求書類を提出する際は、過去の記録や記憶を十分に確認し、請求漏れがないよう、慎重を期する必要があり、専門家の助力を得るなどして、理解が不十分なまま提出しないように気をつけてください。また、 賠償額に不満あるいは疑念があるときには、安易に合意書に署名せず、原子力損害賠償紛争解決センターへ申立てたり、裁判所に対して調停や訴訟を提起するなど他の手段も検討するようにしてください。
なお、原子力損害賠償支援機構は、行政書士と弁護士の訪問相談チームを作り、10月31日より、福島県の仮設住宅を巡回して、請求手続きの相談や代行などの支援を行っています (http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/shienkikou02.pdf )。 -
10の2-3【原子力損害賠償紛争解決センター】
原子力損害賠償紛争解決センターとは、何ですか。
この解決センターに和解仲介の申立をすると、解決までにどのくらいの時間がかかりますか。また、申立をすると、必ずセンターに出頭しなければなりませんか、手続きも教えてください。 -
1 原子力損害賠償紛争解決センター(以下「紛争解決センター」といいます。)とは、原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令を改正して設置された裁判外紛争処理機関(ADR)です。
紛争解決センターは、原子力損害に関する紛争を迅速かつ適正に解決するため、原子力事故の被害者と原子力事業者との和解を仲介することを目的としています(原子力損害賠償紛争解決センター和解仲介業務規程(以下「業務規程」という。)1条)。
和解の仲介を行うのは仲介委員ですが、仲介委員は専門家によって構成され、少なくとも1名は弁護士から指名されます(業務規程16条)。
紛争解決センターの制度は始まったばかりであり、和解の成立までどのくらいの時間がかかるかは実際のところ不明ですが、紛争解決センターは申立受理から3か月程度での解決を目指しているようです。
2 和解仲介手続の一般的な流れは以下のとおりです(業務規程10条以下)。
① 申立書の提出
② 申立書の受理
③ 仲介委員の指名
④ 答弁書の提出
⑤ 口頭審理期日
(⑥ 主張の整理補充・証拠の提出、口頭審理期日)
⑦ 和解案の提示(和解の打ち切り)
⑧ 和解の成立(不成立)
口頭審理期日は、仲介委員が、当事者と面談して意見を聴く必要があると認めるとき、または当事者の協議の場を設ける必要があると認めるときに、原則として紛争解決センターの東京事務所または福島事務所で開催されます。ただし、仲介委員が適当と認めるときは、適宜の場所で開催することもできますし、当事者双方の同意を得て、電話会議の方法で開催することもできます(業務規程24条)。したがって、申立をすると必ず紛争解決センターに出頭しなければならないわけではありません。
なお、紛争解決センターを利用するメリット・デメリットについては、Q10の2-6【各解決手段のメリット、デメリット】をご覧下さい。 -
10の2-4【原子力損害賠償紛争解決センターへの申立と裁判との関係】
原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立をしないで、いきなり裁判を起こすことはできますか。原子力損害賠償紛争解決センターに申立をすると、裁判をすることができなくなりますか。原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介と裁判とを同時に利用することはできますか。
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原子力損害賠償紛争解決センター(以下「紛争解決センター」といいます。)は、原子力事故の被害者と原子力事業者との和解を仲介することを目的としています(原子力損害賠償紛争解決センター和解仲介業務規程1条)。
他方、裁判制度は、紛争を強制的かつ終局的に解決することを目的としています。
両制度は趣旨を異にしており、別個の手続ですから、紛争解決センターに和解仲介の申立をしなくても、裁判を起こすことはできます。
また、紛争解決センターに和解仲介を申し立てたからといって、裁判ができなくなるわけではありません。紛争解決センターで和解が成立しなかった場合はもちろん、被害の一部についてしか和解が成立しなかった場合にも、裁判をすることは可能です。
さらに、紛争解決センターによる和解仲介と裁判とを同時に利用することも可能です。もっとも、同一の損害について紛争解決センターに和解仲介を申し立て、かつ、裁判を起こした場合、和解仲介手続の実施が困難であるとして和解仲介手続が打ち切られる可能性が高いと思われます(業務規程34条)。和解が見込めない損害について裁判を起こし、そうでない損害について紛争解決センターを利用する、といった工夫が必要でしょう。 -
10の2-5【仮払法に基づく仮払金】
国が、仮払金を支払ってくれると聞きました。原発事故によって発生した損害なら、どのような損害でも、全額、東京電力に代わって、支払ってくれるのですか。また、請求の方法を教えてください。東京電力に対する損害賠償請求との関係も教えてください。
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平成23年7月28日、いわゆる仮払法(平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律)が成立しました。
この法律は、今般の原子力事故の被害者を早期に救済する必要があること、被害者に対する損害賠償に時間を要すること等に鑑み、国による仮払金の支払等に関し必要な事項を定めるものです(法1条)。
平成23年11月1日現在、仮払の対象となるのは、福島県、茨城県、栃木県および群馬県における観光業(旅館業、一般貸切旅客自動車運送事業、旅行業、主として観光客を対象とする小売業、主として観光客を対象とする外食産業)の風評被害による損害であって、中小企業者が受けたものに限られています(法3条、施行令1条)。
このように限定されている理由は、観光業の風評被害による損害は、地震・津波による影響の蓋然性が相当程度認められ、迅速な賠償が難しいという特徴を有するからであると説明されています。
もっとも、東京電力による損害賠償の支払状況等を勘案し、仮払の対象等について適宜見直すことになっています(施行令附則2)。
また、仮払の額ですが、概算損害額の5割となります(法4条、施行令2条、施行規則4条)。 仮払金の請求は、確定申告書、損益計算書等の必要資料を添付した請求書を主務大臣(文部科学大臣および被害者の事業を所管する大臣等)に提出して行いますが、やむを得ない事由があると認められるときは、資料の添付を省略することもできます(法5条1項・15条、施行令3条・9条、施行規則5条、施行令9条)。
なお、地方公共団体、農業協同組合、漁業協同組合、商工会議所、商工会等の団体は、仮払金の請求に必要な書類の作成等について必要な援助を行うよう努めるものとされています(法6条)。また、主務大臣は、仮払金請求の受付事務を、原子力損害賠償支援機構又は東京電力に委託することができます(法8条3項、施行令5条・6条)。
仮払金は、東京電力が賠償すべき損害の一部を仮に支払うものですから、東京電力の本払との二重取りはできません。被害者が先に本払を受けたときは、その分は仮払金額から差し引かれますし、国が仮払金を支払ったときは、その額の限度で、被害者の東京電力に対する損害賠償請求権は国に移転します(法9条)。また、支払われた仮払金額が確定した損害額を超える場合には、超過分を国に返還しなくてはなりません(法10条)。 -
10の2-6【各解決手段のメリット、デメリット】
東京電力に対する請求の手段として、複数の方法があるのであれば、どれを選ぶのが適切か考えたいと思います。申立に要する費用や時間、手続きの煩雑さ、効果、その他、それぞれの手続きのメリット、デメリットを教えてください。
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1 東京電力に直接請求する方法
(1)東京電力から送付される請求書を使用する場合、特別な費用はかからず、所定の書類を作成して送付することで請求することができます。また、3か月に1度ではあるものの、請求書で請求可能な損害については、賠償金を早期に受け取ることができるというメリットがあります。しかし、請求書では、東京電力が認めた範囲の損害しか請求できないうえ、請求書類の分量が極めて多く、内容も極めて複雑で煩雑なものであるにも拘らず、合意書を締結すると、請求漏れがあった場合は追加請求が困難になる恐れがあるというデメリットがあります。
(2)東京電力と直接相対交渉する場合、特別な費用や手続きは不要です。東京電力が画一的な請求書類を用意している以上、どこまで個別の交渉に応じるかは疑問がありますが、交渉を円滑に進めることができれば、損害賠償金を早期に受け取ることができるメリットがあります。しかし、東京電力と直接相対するため、請求者の負担が大きく、また、個人などは東京電力との交渉力に差があるので、必ずしも公正な解決が図られない恐れがあります。さらに、東京電力の請求書では補償外とされている損害や、個別具体的な立証が必要な損害や、中間指針等で賠償基準が明確に定められていない損害については、解決に時間がかかるというデメリットがあります。
2 原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立をする方法
原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介は、申立費用が無料であるため、訴訟や調停よりも安価に利用でき、また、申立書も比較的簡便な書式となっています。さらに、原子力損害賠償紛争解決センターは、独立中立の法律実務家(仲介委員)によって組織されている紛争処理機関であり、中間指針を基準として、多数の請求に対応できる体制が整備されているため、公正で円滑な解決が図られるというメリットがあります。
もっとも、中間指針に定めがない損害や賠償基準が不明確な損害については、訴訟や調停による場合と同様、弁護士などの専門家の助力が必要となったり、解決にある程度の時間がかかるものと思われます。また、現時点では福島県郡山市と東京の2箇所しか設置されておらず、その他の地域に住む被害者は利用しづらいこと、あくまで和解による解決方法であるため、東京電力との合意(和解)ができない場合、最終的な解決に至らないというデメリットがあります。
3 訴訟、調停
裁判所に訴訟提起する方法や、裁判所に調停の申立をする方法は、独立した第三者機関により解決する点で、公正な解決が図られるというメリットがあります。しかし、印紙代等の費用がかかりますし、また、複雑な手続きを要することから、弁護士などの専門家の助力が必要となるケースも多いと思われます。さらに、裁判所において、数万件以上にも及ぶ可能性がある請求を処理したり、大規模多数の紛争に対応する体制が整っているとは言い難く、解決に時間がかかるというデメリットがあります。
4 仮払法
仮払法(平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律)に基づき、県を通じて国に仮払い請求をする方法は、所定の請求書を提出することで、東京電力が支払うべき賠償金の一部を国が先に支払う制度ですので、特別な費用や複雑な手続きを要さずに早期の救済が受けられるというメリットがあります。しかし、賠償の対象は、仮払法に定める範囲に限られるうえ、(現在は、福島県、茨城県、栃木県及び群馬県における観光業であって中小企業者が受けた風評被害に限定されています。)支払われるのは概算額の半額とされているため、全額の賠償を受けることはできません。また、国に賠償額の算定を独自に行う体制も組織もないにも拘らず、国が自ら賠償額の概算を決定するため、必ずしも公正な解決が図られるとは言い難いというデメリットがあります。
※仮払い請求手続の詳細はQ10の2-5【仮払法に基づく仮払金】参照。
5 まとめ
以上のとおり、東京電力に対する請求の手段にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、例えば、類型化されて明確な賠償基準がある損害や、賠償の範囲が明確な損害については東京電力の請求書を用いたり直接請求するなどし、その他の損害は原子力損害賠償紛争解決センターを利用するなど、損害の種類や個別具体的な事情に応じて、複数の方法を選択することも検討すべきであると考えます。 -
10の2-7【定期金賠償】
いつまで仕事ができないのか分からないので、東京電力に、毎月、決まった金額を支払ってもらいたいと思っています。このような損害金の請求は、可能ですか。
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裁判手続や原子力損害賠償紛争解決センターのへの申立てではなく、東京電力が用意している原子力損害賠償請求手続きを用いる場合、同制度においては、事故発生時ないし平成23年8月末日まで、同年9月1日乃至同年11月末日まで、同年12月1日乃至平成24年2月末日まで、と平成23年9月以降は3か月の期間で区切り、その時点までの損害賠償を請求するという一時金賠償の方法が想定されています。初回の請求に比して、それ以降の請求手続きはある程度簡易になることが予測されるとはいえ、被害者の側において都度その請求手続きをとるのは、重大な負担になることもあります。
東京電力による損害賠償請求の方法については、硬直的な運用がなされることが想定されますが、今後は毎月の定期金の支払手続についても検討されるべきでしょう。
他方、原子力損害賠償紛争解決センターが仲介する和解においては、個別の事情を十分に斟酌することが期待され、毎月の定期金支払を内容とする和解の可能性は十分あると考えられます。また、本件のような、加害行為自体は過去の一回的事実であるものの、実際の損害が長期間にわたって顕在化し、当該損害内容がある程度確定しているようなものについては、訴え提起により定期金賠償を求めることも検討されるべきです。なお、定期金賠償判決を得たあと、当該判決の口頭弁論終結後に物価上昇等の事情変動があったとしても、確定判決の変更を求める訴えの制度(民事訴訟法117条1項)があるため、事情変動に係る被害者の不利益についてはケアがなされています。 -
10の2-8【和解後に発生した損害の請求・消滅時効】
原子力損害賠償紛争解決センターで、和解が成立した後に発生した損害は、もう東京電力に損害賠償請求することはできないのでしょうか。
東京電力に対する損害賠償請求の時効について、教えてください。 -
1 和解について
原子力損害賠償紛争解決センターは、東京電力と被害者との間の和解の仲介・あっせんを行う機関であり、和解が成立したとしても、当該和解は当事者間の私法上の合意としての効力しか有さないと解されます。かかる和解の合意書においては、交通事故の示談書等において一般に用いられているのと同様に、被害者が一定額の支払いを受けることで満足し、事後それ以上の損害の賠償については加害者に対して一切の請求をしないという条項・清算条項が入れられることが想定されます。
契約自由の原則からは、一般に、いったん和解が成立した以上双方当事者はこれに拘束され、合意後に損害が増加したといって追加の賠償請求をすることができないのが原則であり、当事者は、合意後の損害増大のリスクを織り込んだ上で合意をしたものと解され、後日これを覆すことは容易ではありません。
そのため、被害者の代理人としては、和解の範囲や清算条項の定め方については十分に気を配り、当該和解は、現時点で顕在化している損害の請求に係る和解であり、あくまで損害の一部についてのものであることを明確にすることに努めるべきと思われます。
もっとも、交通事故に関する示談の効力につき判示した最判昭和43年3月15日は、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであって、その当時予想できなかった損害が後日発生した場合には、被害者はその損害賠償を請求できるとしています。原子力事故による損害、殊に放射線の人体への影響については、科学的にも十分解明されているものとは到底言い難く、和解時点で将来の損害を予想していたと評価できないという場合は多々あると思われ、和解後の後発損害について改めて損害賠償請求ができる可能性は事案によっては十分にあると考えられます。
2 時効について
東京電力に対する損害賠償請求の時効に関しては、同請求権は、通常は不法行為に基づく損害賠償請求権と解され、民法724条の問題となります。同条前段は損害及び加害者を知った時から3年という消滅時効を規定していますが、これについては、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度においてこれらを知った時であると解されており、因果関係が明白な損害については、損害発生時から都度3年の消滅時効にかかると解されます。他方、因果関係の存在が明白ではなかったものについては、因果関係の存在が明確になって初めて、損害賠償請求権の行使が事実上可能となると考えられる以上、因果関係があることが明確になった時点から3年の消滅時効にかかると考えられます。これとあわせて、原則として、724条後段の除斥期間にも服すると考えられます。同様に、後遺症等、本件の事故発生から時間を経て生じた損害については、それが判明した時点から3年の消滅時効にかかると考えられます。
なお、現時点では、原子力損害賠償紛争解決センターに対する申立てについて、制度上時効中断の効力が保障されているわけでない点に注意が必要です。 -
10の2-9【生活保護と賠償金との関係】
私は生活保護を受けています。東京電力から賠償金を支払ってもらった場合、生活保護費の返還を求められたり、生活保護が打ち切られることがありますか。生活保護費を返したり、生活保護を打ち切られるおそれがあるなら、私は、東京電力に損害賠償請求をしたくありません。
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1 保護費の返還について
(1)生活保護法63条による返還は、資力はあるが、その資力が未だ現実化していないため生活保護を利用した場合に、後に現実化した資力の範囲内で保護費を返還させる制度です。①対象となる資力性、②資力性の発生時期、③返還請求の範囲が問題となります。
(2)①対象となる資力性について
判例によると損害賠償請求の資力性を肯定しており(最判昭46・6・29民集25・4・650)、東京電力から受領する賠償金について資力性は肯定されることになると考えられます。ただし、今回の事故による東京電力に対する損害賠償請求のうち、慰謝料部分については資力性を認めるのは問題があるとの考え方もあります。
なお、慰謝料について資力性を否定した裁判例は見あたりません。
(3)②資力性の発生時期について
資力の発生時点は、請求権が客観的に確実性を有すると判断された時点です(昭和47年12月5日社保第196号厚生省社会局保護課長通知「第三者加害による補償金、保険等を受領した場合における生活保護方第63条の適用について」)。
交通事故による損害賠償の場合には、事故時から資力性の発生時期が認められていると考えられています(最判昭46・6・29民集25・4・650)。
もっとも、第三者による行為であることが争いになるような公害の損害賠償請求の場合には、判決確定時又は和解成立時に資力性の発生時期が認められていると考えられています(生活保護手帳 別冊問答集2010)。今回の原発事故は、現段階でも、どのような被害が生じるのか、いつまで継続するのか等予測不可能な部分が多く、資力性が、客観的に確実性を有するのは、判決確定時又は和解成立時であると考えられます。
(4)③返還請求の範囲について
資力の発生時期以後、すなわち、判決確定時又は和解成立等によって賠償金を受け取った以降の生活保護費のみを賠償金から返還する必要があり、それ以前に受け取った生活保護費については返還する必要はありません。
2 生活保護の停止・廃止について
(1)収入が最低生活費を超えた場合には、「保護を必要としなくなったとき」に該当し、生活保護の停止や廃止が行われます(生活保護法26条)。
生活保護の停止は、概ね6か月以内に再び保護を要する状態になることが予想される場合に行われ、生活保護の廃止とは、継続的な収入の増加等により、以後特別な事情が生じない限り、保護を必要としないと認められる場合に行われます。
(2)賠償金の収入認定について
賠償金については、収入認定が行われると考えられています。
ただし、慰謝料については収入認定することについて問題とする考え方もあります。
(3)自立更生計画の策定について
補償金等のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額については収入認定しないとされています。
そのため、自立更生計画を策定することにより収入認定を免れることが可能となります。
例えば、東京電力から家具等の損害について賠償され、家具を購入するような場合に利用が可能と考えられます。
なお、自立更生計画に計上できるものは、家具等の再調達費用に限らず、教育費、介護費用、技能習得のための費用など広く計上することが認められています。詳細については以下のURLの別紙2の項目をご参照ください。
また、計上の方法も、費目・金額を積み上げずに包括的に一定額を計上し、この場合には使途については確認する必要がない等柔軟な対応が可能とされています。詳細については以下をご参照ください。
参考:自立更生計画の策定と収入認定
原発事故・損害賠償マニュアルQ28、29参照 -
10の2-10【災害弔慰金、義援金、被災者生活再建支援法による支援との関係】
原発事故の被害者は、災害弔慰金や義援金、被災者生活再建支援法による支援を受けることができますか。
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1 災害弔慰金は、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、市町村の条例によって災害の被害者に支給されます。同法の「災害」は自然災害を意味するところ、原発事故は自然災害ではないともいえます。しかし、災害弔慰金の支給対象となる死亡には、避難生活のストレスや疲労が原因で亡くなる「災害関連死」も含まれるため、厚生労働省は原発事故の被害者(遺族)にも災害弔慰金を支給すると判断しています。
2 原発事故の被害者は、義援金を受けることができます。学識経験者、被災都道県および日本赤十字社、中央共同募金会をはじめとする義援金受付団体を構成メンバーとする義援金配分割合決定委員会は、平成23年6月6日開催の第2回委員会において、①死者・行方不明者、②全壊・全焼、③原発関係避難世帯を1、④半壊・半焼世帯を0.5とする指標を決定しました(参 照http://www.jrc.or.jp/oshirase/l3/Vcms3_00002277.html)
3 被災者生活再建支援法は自然災害による被害を対象としており、自然災害とは「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」とされています(同法2条1号)。そして、現在のところ、運用においても原発事故は対象外とされています。したがって、原発事故を理由としては被災者生活再建支援法による支援を受けることはできません。この点について、日弁連は、福島第一原子力発電所事故によって避難等を指示された世帯はもちろん、被曝を避けるために避難することが必要かつ合理的と認められる世帯についても支援法を適用するべきであるとの意見を表明しています(日本弁護士連合会 平成23年7月19日「被災者生活再建支援法改正及び運用改善に関する意見書」)
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10の2-11【損益相殺】
地震や原発事故を理由として、災害弔慰金や義援金、お見舞金を受領した場合、東京電力に対する損害賠償金が減額されることはありますか。地震や津波による建物倒壊を理由として損害保険金を受け取っていた場合、地震・津波で怪我や体調を崩して入院し、生命保険金を受け取った場合は、どうでしょうか。県からの助成金は、どうでしょうか。
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1 地震や原発事故を理由として、災害弔慰金や義援金、お見舞金を受領していても、東京電力に対する損害賠償金が減額されることはありません。災害弔慰金や見舞金は、そもそも損害填補のためものではなく、損益相殺は否定されます。また、義援金は寄付を原資とするものであり、そもそも損害填補のためのものではなく、損益相殺は否定されます。なお、中間指針においても、災害弔慰金(ただし、損害の填補を目的とする部分を除く)、義援金について損害額から控除すべきでないとされています(中間指針第10の1(備考)4)⑩⑪)。
2 次に、損害保険金は損害を填補するためのものですが、保険料の対価であるため、損益相殺の対象とはならないといえます。ただし、保険会社は、支払った保険金の限度で当然に代位するため(保険法25条1項1号)、被害者が利益を二重に受けることはできません。なお、中間指針では、損害保険金については、損益相殺の対象とはならないが損害額(財物価値の喪失又は減少等の金額)から控除されるべきとされていますので注意が必要です(中間指針第10の1(備考)3)⑤)。
3 生命保険金も損害を填補するためのものですが、保険料の対価であるため、損益相殺の対象とはならないといえます。また、生命保険金については、中間指針においても損害額から控除すべきでないとされています(中間指針第10の1(備考)4)⑥)。
4 県からの助成金については、損害を填補する趣旨か否か、損害と同質性のある利益か等、当該助成金の性質によって判断が異なります。
5 なお、雇用保険や労災による給付など、各種の給付についても指針が示されています(中間指針第10の1。(Q10-14参照)。 -
10の2-12【避難後の身体的疾患と原発事故との因果関係】
原発事故後、避難指示に従って、避難所に避難しました。避難所生活のストレスもあってか、夫は、急に心筋梗塞を起こしました。一命はとりとめたものの、不整脈等の後遺症が残って継続的な通院が必要となり、まともに働けません。夫の心筋梗塞と、その後遺症による損害を東京電力に請求することができますか。どのような損害を請求することができますか。
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心筋梗塞とは、冠動脈の閉塞によってもたらされる心筋壊死であり、食生活の向上や生活様式の欧米化に伴って急激に増加しつつあると言われています。そして、ほとんどすべての心筋梗塞は、冠動脈硬化症に起因するとされています。ここにいう冠動脈硬化症とは、冠動脈のアテローム硬化(粥状動脈硬化)であり、一般に、高コレステロール血症、喫煙、収縮期高血圧、肥満、糖尿病、心血管系疾患の家族歴等が発症のリスク因子とされています(南山堂医学大辞典19版)。その他に、ストレス過多、過労もリスク因子となっているとの指摘もなされています。そして、後遺症としては、狭心症、不整脈などが挙げられています。 質問の事例では、原発事故後に避難指示に従って避難所に非難された後、心筋梗塞を発症されたとのことですので、避難所生活でのストレスや過労が心筋梗塞発症の直接の原因となった可能性もあります。
仮に原発事故と心筋梗塞の発症との間に因果関係が認められ、さらに治療経過その他によって不整脈等の後遺症との因果関係も認められれば、後遺症による損害を東京電力に対し請求できる可能性もあります。
ただし、原発事故と心筋梗塞の発症との因果関係(さらに後遺症との因果関係も)は損害賠償を請求する側で立証する必要があります。
このうち、原発事故と心筋梗塞の発症との因果関係については、原発事故前の生活状況、既往症の有無、上記のリスク因子の有無、避難後の生活状況等及び心筋梗塞の治療経過に関する医療記録などを総合的に検討した上で判断されることになると思われます。これらの立証資料としては、原発事故前の生活状況を示す資料(勤務先での勤務状況の資料など)、既往症がなかったことを示す資料(かかりつけ医での診療記録等)、リスク因子が存在しなかったことを示す資料(従前の健康診断の結果等)、避難後の生活状況を示す資料(家族の陳述書等)等が考えられます。
また、仮に因果関係が認められたとしても、元々の体質、既往症等により損害が拡大したと認められる場合には、損害の公平な分担という考え方により、素因減額がなされる可能性もあります。 -
10の2-13【PTSD】
福島県内に住んでいます。原発事故後、不安感が増し、不眠が続き、テレビで原発事故の映像を見ると、自然と涙が出てくるようになりました。原発事故後6か月を経過しても、この症状は治まりません。私は、東京電力に、損害賠償請求することができるのでしょうか。
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PTSD(Posttraumatic stress disorders)とは、心的外傷後ストレス障害と呼ばれ、1980年に疾患として位置づけられた歴史の浅い疾患です。
PTSDと診断されるためには、一般的に①外傷的出来事の存在(ここにいう外傷的出来事は、危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事であるとされています。)を前提として、②再体験症状(いわゆるフラッシュバック)、③回避・麻痺症状、④持続的な覚醒亢進(過覚醒)症状の存在が必要であるとされています。
質問の事例では、福島県内に住んでいるという事情のみをもって①の危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事が存在したといえるかという点に問題がありますが、居住地域及び原発事故発生時の具体的状況によってはそのような出来事の存在を肯定できる場合もあると考えられます。
いずれにしても、PTSDの罹患を理由として損害賠償請求をするためには、その他の②ないし④の症状を含め、医師による診断が必要であると考えられます。
また、損害の拡大について被害者の心因的な要因が寄与している場合には、損害の公平な分担という考え方により、素因減額がなされる可能性もあります。地震や津波が寄与したことによる減額も、問題となり得る余地もあると思われます。 -
10の2-14【うつ病悪化と原発事故との因果関係】
原発事故前からうつ病に罹患し、通院していましたが、原発事故後うつ症状が悪化し、働けなくなりました。東京電力に損害賠償請求できますか。
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東京電力に対する損害賠償請求が認められるためには、原発事故とうつ病悪化との因果関係を請求する側で立証する必要があります。
この点については、最終的には原発事故前のうつ病罹患の状況、治療状況、生活状況、原発事故体験(避難生活の体験を含む)の内容、うつ病悪化の経緯、悪化後の治療状況等の諸事情を総合的に考慮して判断されることになると考えられます。
また、元々うつ病に罹患し通院していたとのことですので、それを理由とした素因減額がなされるべきか、またその割合はどの程度か、という点が問題になると考えられます。この点については、カルテ等の医療記録による立証に加え、主治医に原発事故によるうつ病悪化の機序について詳しく記載した意見書を書いてもらうことが有効であると考えられます。 -
10の2-15【自主避難者(福島県内に在住)の場合】
福島県内(避難区域外)で生活していましたが、5歳、3歳の子への影響が心配で、夫は福島に残って仕事をし、私は、子どもらと一緒に東京に避難してきました。二重生活のため家賃はかさみ、夫が東京に会いに来る交通費もかなり負担になっています。このままでは、家族がばらばらになってしまうのではないかと不安に思っています。東京電力に、どういう損害を賠償請求できますか。
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1 自主的避難者による損害賠償請求とその範囲
(1)はじめに
避難指示等対象区域に居住する者ではなくても、被曝の危険を回避するための避難行動が、社会通念上合理的であると認められる場合には、それによる損害は、賠償すべき損害となり得ます。
しかし、中間指針では、避難指示等による損害を定めるにとどまり、避難指示等に基づかず自主的に避難した者の損害賠償について基準を示してはおりませんでした。
この点について議論が繰り返された結果、平成23年12月6日の中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)では、自主的避難等に関して、指針を定め、一定の範囲で損害賠償の対象になることを明らかにしました。
また従来から議論のあった、自主的避難を行わずに滞在し続けた者についても、自主的避難した者と同額が損害賠償されるべきものとしました。
参考:
中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/07/1309711_3_1.pdf
中間指針追補に関するQ&A
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/07/1309711_5_1.pdf
(2)中間指針追補の内容
ア 自主的避難等対象区域
福島県内の23市町村(福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、相馬市、新地町、いわき市)のうち、避難指示等対象区域を除く区域。
詳細は、以下を参照してください。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/07/1309711_4_1.pdf
イ 対象者
自主的避難等区対象区域内に生活の本拠としての住居があった者。本件事故発生後に住居から自主的避難を行った場合、当該住居に滞在を続けた場合、本件事故発生時に自主的避難等対象区域外に居り引き続き同区域外に滞在した場合を問わない。また、本件事故発生当時避難指示等対象区域内に住居があった者で、上記中間指針の精神的損害の賠償対象とされていない期間並びに子供、妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間も、自主的避難等の対象者の場合に準じて対象となる。
ウ 損害項目
以下の損害のうち一定の範囲が賠償すべき損害となる。
①自主的避難を行った場合
ⅰ)自主的避難によって生じた生活費の増加費用
ⅱ)自主的避難によって生じた精神的苦痛>
ⅲ)避難及び帰宅に要した移動費用
②自主的避難対象区域に滞在を続けた場合
ⅰ)自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合の精神的苦痛
ⅱ)自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合の生活費の増加費用
エ 損害額
上記ウの①及び②につき、合算した額を同額として、損害額を算定する。
①子供及び妊婦 本件事故発生から平成23年12月末まで
1人 40万円を目安とする
(平成24年1月以降については今後、必要に応じて検討される)
②その他の自主的避難等対象者 本件事故発生当初の時期の損害として1人 8万円を目安とする
③本件事故発生当時に避難指示等対象区域に住居があった場合
中間指針の避難指示等による精神的損害の賠償対象とされていない期間は、上記①、②の金額が、その対象期間に応じた目安であることを勘案した金額とする。
子供、妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間については、本件事故発生から平成23年12月末までの損害として1人20万円を目安とし、中間指針追補の対象となる期間に応じた金額とする。
オ また、中間指針追補は、個別具体的な事情に応じて、以上の損害項目以外の項目が賠償の対象となる場合や異なる賠償額が算定される場合が認められることがあり得ることを明記しています。また備考中において、「自主的避難等の事情は個別に異なり、損害の内容も多様であると考えられるが、中間指針追補では、下記の[対象者]に対し公平に賠償すること、及び可能な限り広くかつ早期に救済するとの観点から、一定の自主的避難等対象区域を設定した上で、同対象区域に居住していた者に少なくとも共通に生じた損害を示すこととする。」としています。
したがって、中間指針追補の解釈、運用に際しては、自主避難等の事情や損害が個別に異なる中で、「少なくとも共通に生じた損害」のみを対象に金額を定めたものにとどまり、具体的事情に応じてより広範、高額な損害賠償が認められるべきものであることに留意すべきです。
(3)中間指針追補の評価
中間指針追補は、自主的避難者についても一定の範囲で損害賠償の対象と認め、また、個別具体的な事情に応じてそれ以外の項目や額についても損害賠償と認めた点は評価されるべきです。
他方で、損害賠償の金額としては、あまりに金額が低すぎ実態に即していないとの指摘もなされております。上記(2)オで述べたように、事情が個別に異なる自主的避難等の特性を考慮して、「少なくとも共通に生じた損害」のみを定めた指針であることを考慮しても、そのような感は否めません。
金額については、子供及び妊婦については40万円とされていますが、子供を外で遊ばせることができないとの報告も多々なされていることを考えると十分でないことが多々あると考えられます。それ以外の者については、本件事故発生当初において、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱いた点のみが考慮され、事故発生当初の時期における損害として1人8万円と定められているにとどまり、その後の低線量被曝に関する配慮が十分ではありません。また、実際の生活費増加費用、移動費用は、慰謝料と合算して算定されることとされ、あまり大きく考慮されていないようにも思えます。
個別具体的事情により、指針が定めた額では、慰謝料や生活費増加費用、移動費用の算定として不十分であっていたり、或いはその他の損害が生じているような場合には、実態にあわせて柔軟に損害を認める運用がなされるべきものと考えられます。
2 質問の事例について
質問の事例では、中間指針追補によると、住居が自主的避難対象区域内にある場合には、5歳、3歳の子については、平成23年12月末までの損害として、それぞれ40万円が賠償され(平成24年1月以降分については今後の検討事項)、また、父母については事故発生当初の時期の損害としてそれぞれ8万円が賠償されることになります。
しかし、二重生活による生活費の増加費用、移動費用が多額である場合には、個別具体的事情を考慮して、より高額の損害賠償が認められるべきものと考えます。 -
10の2-16【自主的避難者(福島県外に在住)の場合】
横浜市でも、空間放射線量が高い場所があると聞き、全く縁はありませんでしたが、子どもと一緒に九州に避難し、新しい生活を始めました。九州に避難する際にかかった交通費や引っ越し費用を東京電力に請求することができますか。慰謝料は請求することができますか。
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中間指針追補で定められた自主的避難対象区域は、福島県内の23市町村のうち避難指示等対象区域を除く区域と定められておりますので、福島県外はその対象区域になっておりません。
しかし、福島県外であっても、場所によっては空間放射線量が高い地点はあるようです。空間放射線量の多寡等、個別具体的事情の内容によっては、損害賠償請求が可能となる場合もあると考えられます。
但し、質問の事例の横浜市は、福島第一原子力発電所から相当離れており、放射線量が高い地域があったとしても福島県及びその隣接地域ほど広範ではなく、除染等により放射線量を低減させることも可能な場合もあります。一般論としては、避難に関する費用や慰謝料を請求することは難しいことが多いように思われますが、具体的線量等の個別事情によっても異なると考えられます。 -
10の2-17【放射線量が比較的高い地域に残った場合の慰謝料と発病した場合の因果関係】
私の周囲でも、福島県外にたくさんの方が自主避難しましたが、私には避難できるだけの余裕がないため、福島県内での生活を続けています。自主避難者に損害賠償請求が認められるなら、残って生活している者にも、慰謝料が認められるべきだと思いますが、難しいのでしょうか。
もし、このまま福島県内で生活を続けて、病気を発症した場合、東京電力に損害賠償請求をすることができますか。 -
1 自主的避難しなかった人からの損害賠償請求
(1)避難区域等ではないけれども、放射線量が比較的高い地域から自主避難せず居住し続けた場合に、慰謝料請求が認められるかどうかについては、中間指針では何ら言及されていませんでした。
その後の議論を経て、平成23年12月6日の中間指針追補では、自主的避難等対象区域内に生活の本拠としての住居があった者については、自主的避難を行った場合と、自主的避難を行わず住居に滞在し続けた場合を区別せず、損害賠償の対象とすることとしました。自主的避難等対象区域に滞在し続けた場合の具体的な損害としては、放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により、①正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛、②生活費が増加した分があればその増加費用、が認められました。
しかし、具体的金額については、上記Q10の2-15参照のように、必ずしも十分な金額ではありません。
2 自主避難せず生活して病気になった場合
(1)原発事故による放射性物質の被曝を原因とする身体の傷害は、損害賠償の対象となりますが、因果関係を立証できるかどうかにつき困難な問題があります。
(2)なお、中間指針では、本件事故の復旧作業等に従事した原子力発電所作業員、自衛官、消防隊員、警察官又は住民その他の者について、本件事故に係る放射線被曝による急性又は晩発性の放射線障害により傷害、疾病、死亡に至った場合、逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等を損害賠償の対象としています。しかし、復旧作業等とは無関係に、放射線量が比較的高い地域に居住した結果、健康被害を受けた場合については中間指針に言及がありません。
(3)晩発性の放射線障害は、本件原発事故から相当期間経過後に発症する上、放射線被曝と無関係に病気になった場合の症状と区別することができず、因果関係の有無が問題になりやすいと思われます。また、低い放射線量でも、発がん等の可能性を指摘する見解も存するところです。
これらの病気と原発事故による被曝との因果関係を証明するためには、疫学的証明(多数人の集団を対象にして疾病の原因や発生条件を統計的方法により解明する疫学の手法により、共通した因子を抽出し、その現象の原因を推定する)等の方法により立証を行うことが考えられます。かかる立証手法は様々な公害訴訟でも用いられています。 -
10の2-18【妊娠中の場合】
現在、妊娠8ケ月です。妊娠初期に避難区域にいて、原発事故に遭遇し、避難しました。
もし、これから生まれてくる赤ちゃんに異常や障害があると分かったとき、私は、慰謝料等を請求することができますか。
また、私自身、これから生まれてくるお腹の赤ちゃんに障害が生じないか、不安な日々を送っています。この不安について、東京電力に対して慰謝料の請求をすることができないでしょうか。 -
1 前段
(1)まず、今回の原発事故によって赤ちゃんが重度な障害等を持って生まれたといえる場合(因果関係が認められる場合)には、交通事故の後遺障害慰謝料に準じて請求することができると考えられます。
(2)また、近親者も不法行為によって、被害者の生命侵害の場合にも比肩し得べき精神上の苦痛を受けた場合には、近親者固有の権利として慰謝料請求することが認められています(最判昭33・8・5民集12・12・1901)。
今回の原発事故によって赤ちゃんが重度な障害等を持って生まれたといえる場合(因果関係が認められる場合)には、親が慰謝料請求を行うことは可能であると考えられます。
2 後段
妊娠初期に原発事故に遭遇したことによるストレス増は、以下の通り、母親の慰謝料の増額事由になり得る考えらえます。
今回の原発事故による加害行為の態様は、①放射選による影響が科学的には完全には解明されていないので身体への影響があるか内容的に予測不可能であること、②放射線の影響がいつまで続くのか時間的に予測が不可能であること、③放射線は五感の作用ができないので安全な場所が予測不可能であることなどの予測ができないという大きな特徴があります。このような予測が不可能な加害行為に、一定期間、細胞分裂が最も盛んな時期の胎児を、胎児の母体である母親がさらさせられてしまったことは、通常の避難生活で受けるストレスとは別個の大きな精神的苦痛であると考えられます。
そのため、妊娠初期に原発事故に遭遇したことによるストレス増は、母親の慰謝料の増額事由になり得る考えらえます。
ただし、放射線の影響が少ない地域や事故現場から離れている地域に住んでいた場合には否定される可能性が高くなると考えられます。
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10の2-19【原発事故後のストレスとカウンセラー費用】
私が住んでいる地域は政府の避難等の指示等の地域に指定はされていませんが、その付近に住んでいるため、原発事故後、小学生の子どもを外で遊ばせることができないと思うようになり、また、食品にも気を使っています。母親である私は、イライラし、余裕がなくなったためか、子どもは甘え、そんな子どもを煩わしいと思うようになりました。夫に勧められて、私は、カウンセラーを受けるようにしました。カウンセラーの費用は、東京電力に損害賠償請求することができますか。
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1 カウンセラーの費用の請求について
中間指針「第3[損害項目]5生命・身体損害」によれば、原発事故により避難等を余儀なくされたため治療を要する程度に健康状態が悪化(精神的障害を含む)した場合には、治療費等を賠償するべき旨述べられています。そのため、原発事故によって避難等を余儀なくされた結果、精神的健康状態が悪化した場合(事故との因果関係が認められる場合)の治療費としてカウンセラーの費用は東京電力に損害賠償請求できます。
そして、今回の事故の避難生活等のストレスによる精神的健康状態の悪化の蓋然性がある場合に、原発事故により避難等を余儀なくされた者が、予防のために、カウンセラーを受ける場合には、カウンセラーの費用も相当因果関係の範囲内にあると考えられます。
また、中間指針で触れられていない場合でも、本件事故との間で相当因果関係の認められる損害については、損害賠償請求が認められます。今回の原発事故は、大規模な被害であり、かつ、被害が予測不可能(①放射選による影響が科学的には完全には解明されていないので身体への影響があるか内容的に予測不可能であること、②放射線の影響がいつまで続くのか時間的に予測が不可能であること、③放射線は五感の作用ができないので安全な場所が予測不可能であることなど)である点に特徴があります。
したがって、個々の事情によって異なりますが、1つの考え方として、年間の被曝量が1ミリシーベルトを超える地域に住んでいる住民について、被曝のリスク等による精神的な不安を抱き、ストレスによる精神的健康状態の悪化の蓋然性があると判断される余地はあるように思われ、この場合、カウンセラーの費用も相当因果関係ありとされるように思われます(なお、事前に、健康状態の悪化が事故後見受けられる、カウンセラーを受ける必要がある等の医師の診断を受けておくことが望ましいと考えられます。)。
また、大人よりも、放射能による健康被害を一般的に受けやすいと考えられている子供の両親は、子供のいない人に比べ、今回の事故によるストレスを多く抱えてしまうことは予見可能であり、カウンセラーの費用との相当因果関係は認められる可能性が高くなると考えられます。 ただし、原発事故による精神的健康状態の悪化予防するための費用であるため、放射線の影響が少ない地域や事故現場から離れている地域に住んでいる場合にはカウンセラーの費用の請求が認められる可能性は低くなると考えられます。
2 素因の減額について
原発事故との因果関係が肯定されるような場合には、本件事故の特殊性から、特別の事情を除いて、素因減額は否定されるべきとの考え方が少なくはありません。
3 今回の事例について
今回の場合、政府の避難等の指示等の地域の付近に住んでおり、小学生の子供の親であるため、カウンセラーの費用との間で相当因果関係が認められる可能性は高いと考えられます。 -
10の2-20【避難区域の営業損害等の終期と定期金賠償】
避難区域内の営業損害、就労不能等の損害は、いつまで認められるのですか。継続的に発生する損害は、どのように東京電力に請求していくのが、適切でしょうか。
警戒区域や計画的避難区域は、戻ることができないと認められるまでは、毎月請求していったほうがよいか。 -
1 避難区域内の営業損害、就労不能等の損害はいつまで認められるか
(1)中間指針において、「営業損害の終期は、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについては、現時点で全てを示すのは困難であるため、改めて検討する」とした上で、「一般的には事業拠点の移転や転業等の可能性があることから、賠償対象となるべき期間には一定の限度があることや、早期に転業する等特別の努力を行った者が存在することに、留意する必要がある」と指摘しています(中間指針第3の7(7))。
(2)中間指針は、就労不能等の損害の終期について、「基本的には対象者が従来と同じ又は同等の就労活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについて、その具体的な時期等を現時点で見通することは困難であるため、改めて検討する」とした上で、「一般的には、就労不能等に対しては転職等により対応する可能性があると考えられることから、賠償対象となるべき期間には一定の限度があることや、早期の転職や臨時の就労等特別の努力を行ったものが存在することに留意する必要がある」と指摘しています(中間指針第3の8(8))。
(3)このような中間指針の考えは、被害者側の損害回避又は軽減義務(最判平21・1・19民集63・1・97、判タ1289・85参照)に配慮しているものと考えられますが、原発事故の場合には地域コミュニティが広範囲に喪失しており、事業拠点の移転や転職は容易ではないことから、損害の終期については、慎重に検討するべきです。
(4)文部科学省作成の「中間指針に関するQ&A集」においても、「各損害の終期に関する具体的な時期はまだ決まっていない」とされており、今後の帰趨を注視する必要があります(「中間指針に関するQ&A集」問60、問86、87等)
2 請求の方法
(1)中間指針は、「従来、対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者又は現に営んでいる者において、避難指示等に伴い、営業が不能になる又は取引が減少する等、その事業に支障が生じたため、現実に減収のあった場合には、その減収分が賠償すべき損害と認められる」とした上で、「上記減収分は、本件事故がなければ得られたであろう収益と実際に得られた収益との差額から、本件事故がなければ負担していたであろう費用と実際に負担していた費用との差額(本件事故により負担を免れた費用)を控除した額」(=逸失利益)としています(中間指針第3の7(Ⅰ))。
また、中間指針は、「費用」には、「売上原価のほか販売費及び一般管理費も含まれる」とした上で、「将来の売上のための費用を既に負担し、又は継続的に負担せざるを得ないような場合には、当該費用は本件事故によっても負担を免れなかったとしてこれを控除せずに減収分(損害額)を算定するのが相当である」としています(中間指針第3の7(3)(4))。即ち、変動経費のみ控除し、固定経費は控除の必要はなく、例えば、リース料は、「将来の売上のために費用を既に負担し、又は継続的に負担せざるを得ないような場合」に該当し、費用から控除しない扱いになると考えられます(なお、不当解雇の場合に解雇期間中の中間収入が控除される取扱いなどとは異なることに注意が必要です)。
(2)本件事故は損害が継続して発生し続けており、最終的にどこまで広がるか分かりません。損害発生が継続しており、終期が不確実なために、いつ、どのようなタイミングで損害賠償請求を行っていくかということが問題になります。事件の全貌を把握してから一括して請求するという方法では、事件の全貌が明らかになるまで被害者が放置される結果を容認することになってしまい、不当だからです。
一つ目の方法としては、損害が発生する度ごとにその分の賠償を請求するという方法があります。継続的に発生している損害について毎日賠償請求することは事実上不可能と思われますから、実際は、1か月から数か月単位でまとめて請求するということになると思われます。
二つ目の方法としては、定期金払いによる損害賠償の方法があります(本Q&AのQ6を参照)。将来発生する損害については、「中間指針に関するQ&A集」問71において、「確実に発生することが証明されれば賠償が認められることも考えられますが、現時点において本件事故が収束していない状況で、将来の損害について確定的な判断は難しい」とされていることに注意が必要です(大阪国際空港騒音公害事件最大判昭56・12・16民集35・10・1369も参照してください)
(3)いつまでに請求したら良いかという点については、3年の消滅時効が適用される損害もあると考えられるので注意が必要です。
(4)以上のような事情を勘案して、警戒区域や計画的避難区域についても請求方法を検討する必要があります。 -
10の2-21【商圏喪失による損害】
福島市内で幼稚園を営んでいましたが、園児が自主避難したため、幼稚園の経営を維持できなくなりました。私は、東京電力に、損害賠償を請求することができるでしょうか。
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1 福島市内は「政府による避難等の指示等があった対象区域」に認定されていません。しかし、平成23年12月6日中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)により、自主的避難等対象区域とされ、自主的避難等した場合にも一定の範囲で損害賠償の対象とされました。
本件のように園児が自主避難した場合、それが放射性物質による汚染の危険性を懸念してなされたときは、(中間指針に明記されているわけではないものの)いわゆる風評被害の場合と同様に考えることができます(「原発事故・損害賠償マニュアル」日本加除出版 Q103 2(3))。
2 中間指針における風評被害の一般的基準は、「消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合」とされています(中間指針第7の1(Ⅱ))。
3 通学時、帰宅時や課外活動において児童が幼稚園施設以外の周辺地域を行動範囲としていますので、「汚染の危険性」について、単に幼稚園施設における汚染の危険性に限定するべきではありません。懸念の対象となる「汚染の危険性」については、当該幼稚園が立地する地域全体について検討するべきです。
4 「汚染の危険性」に対する懸念を有し、これを敬遠しようとする心理の主体としては、児童の安全に配慮すべき親権者等の保護者を主体とするべきです。
5 「合理性を有している」か否かについては、本件事故との時間的場所的接着性、性別、放射線量の程度、累積の被曝状況その他一切の事情を総合的に衡量して決することになります。(児童を含む)子どもについては、放射線感受性が高いといわれており、特別の配慮が必要なこと(平成23年5月12日付社団法人日本医師会「文部科学省『福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方』に対する日本医師会の見解」、同年6月2日付社団法人日本医学放射線学会「原子力災害に伴う放射線被ばくに関する基本的考え方」参照)、在学期間中に継続的に放射線の影響を受けるため懸念がより増幅されることなどに鑑みると、広く合理性が認められるべきです。
特に(児童を含む)子どもについては、重大かつ不可逆的な損害が生じる恐れがある以上、予防原則の観点から、少なくとも年間5.2ミリシーベルト(管理区域や労災基準に該当するレベル)を超える区域・地点から避難することは合理的だと考えるべきです(「原発事故・損害賠償マニュアル」日本加除出版 Q41)。
中間指針追補においても、子供及び妊婦の場合は、放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていることから、比較的低線量とはいえ通常時より相当程度高い放射線量による放射線被曝への恐怖や不安を抱くことには一定の合理性を認めることができるとされています。 -
10の2-22【緊急時避難区域解除と損害賠償】
9月30日に緊急時避難準備区域が解除されました。すぐに自宅に戻ってしまうと、戻った後には、損害賠償は認められなくなりますか。解除後、いつまで、損害賠償請求が認められるのでしょうか。
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1 中間指針が、「避難指示等の解除等(指示、要請の解除のみならず帰宅許容の見解表明を含む)から相当期間経過後に生じた避難費用は、特段の事情がある場合を除き、賠償の対象とならない」(中間指針第3[損害項目]2(Ⅲ)或いは「避難指示等の解除等から相当期間経過後に生じた精神的損害は、特段の事情がある場合を除き、賠償の対象とならない」(中間指針第3[損害項目]6(Ⅳ)②)としているように、解除後相当期間経過した後は損害賠償請求が認められなくなると考えられます。
2 「相当期間」の判断にあたっては、避難等した者が帰宅の準備をするのに必要な期間を考慮する他、生活の本拠として居住するのに必要不可欠な病院や学校などのインフラが復旧するのに必要な期間等も考慮しなければなりません。そのため、病院や学校などのインフラが復旧した後、2~3か月程度では「相当期間」を経過したとは言わないと考えるべきです(「原発事故・損害賠償マニュアル」日本加除出版 120頁)。
3 中間指針は、平成23年4月22日に指定が解除され避難指示等の対象外となった「屋内退避区域及び地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域(南相馬市の一部地域)」については、「同日から相当期間経過後は、賠償の対象とならない」とした上で、「この相当期間は、これらの区域における公共施設の復旧状況等を踏まえ、解除等期日から住居に戻るまでに通常必要となると思われる準備期間を考慮し、平成23年7月末までを目安」としています(但し、「これらの区域に所在する学校等に通っていた児童・生徒等が避難を余儀なくされている場合は、平成23年8月末までを目安」としています)(中間指針第3の2(4))。中間指針の考え方では、「相当期間」の判断基準が短すぎるといわざるを得ません。
4 緊急時避難準備区域等の解除後における相当期間については、「それらの区域の指定が解除された後、これらの区域における公共施設の復旧状況等を踏まえて原子力損害賠償紛争審査会で検討されるもの」と考えられていますので、注視する必要があります( 「中間指針に関するQ&A集」 問34)。
5 「特段の事情がある場合」とは、例えば、避難中に健康を害し自宅以外の避難先等で療養の継続が必要なため帰宅できない場合等を指すとされています( 「中間指針に関するQ&A集」 問32)。
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10の2-23【風評被害(報道機関やイベントの主催者に対し)】
ある地域で、東日本大震災の復興を応援しようと、福島の花火業者が生産した花火の使用を計画していたが、市民からの抗議があり、放射線量に関するデータの提出も間に合わなかったため、他の地域で生産された花火を使うことになったという報道を見ました。広く報道されたため、この花火業者だけでなく、福島県内の事業者に関し、新たな風評被害が生み、同じ福島県内の事業者としては、腹立たしく思っています。福島県内で事業を営む者は、報道機関に対し、損害賠償請求や、もう報道しないでくれと請求することはできるでしょうか。
なお、本件で、花火の主催者に、損害賠償請求することができるのでしょうか。それとも、東京電力に損害賠償請求することになるのでしょうか。 -
1 当該報道自体は客観的事実を伝達したにすぎないため、報道の内容が虚偽であった等の事情があれば格別、そのような事情が場合に報道機関に対し損害賠償や報道の差止めを請求することは難しいと言わざるを得ません。
2 なお、本件で花火の主催者に対して損害賠償請求をすることも考えられますが、市民からの抗議があること、放射線量が不明であること等の事情を勘案すると、本件で主催者に過失を認めることは難しいと考えられます。
3 そうすると、風評被害による損害として東京電力に損害賠償請求できるか否かが問題となります。
中間指針では、風評被害とは、「報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念した消費者又は取引先による当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等をされたために生じた被害」(中間指針 第7・1(指針)Ⅰ))。と定義されており、本件被害も該当しうるといえます。損害賠償の対象となるためには原発事故との相当因果関係が必要ですが、中間指針では一般的な基準として、「消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合」としています(同Ⅱ)。
諸般の事情によっても異なりますが、本件では、福島県で製造した花火によって放射性物質が拡散するとは考え難く、当該花火を敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有しているとは認められない可能性があります。
なお、中間指針では、製造業の風評被害について、「本件事故発生県である福島県に所在する拠点で製造、販売を行う物品又は提供するサービス等に関し、当該拠点において発生したもの」は原則として相当因果関係が認められるとしており(同 第7・4(指針)Ⅰ)①)、これに該当するかどうかも検討する必要があります。 -
10の2-24【風評被害の終期】
震災から一定期間が経過しましたが、今でも、福島県産のみならず、茨城県産、栃木県産、群馬県産の野菜というだけで、売れません。この被害について、東京電力に、いつの時点の損害まで請求することができますか。また、すべての被害が明らかになってから請求すべきなのでしょうか。
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かかる被害については、取引数量の減少による減収分を営業損害として損害賠償請求をしていくことが検討されるべきです。もっとも、福島県、茨城県、栃木県、群馬県等の農林水産物の取引数量や市場動向等からは、一部の品目については若干の改善はみられているものの、総じて、事故以前の水準までの回復はしていません。
かかる風評被害については、市場が当該商品等を避ける行動が合理的といえる限り、相当因果関係のある損害として賠償の対象となるべきですが、事故以前の水準に現実に回復するまで無限定に賠償請求がなしうると考えることも必ずしも妥当ではありません。
中間指針では、風評被害は、特定の商品等に対する危険性を懸念して敬遠するという消費者・取引先等の心理的状態に基づくものである以上、風評被害が賠償対象となるべき期間には一定の限度があるとし、「平均的・一般的な人を基準として合理性が認められる買い控え、取引停止等が終息した時点」が抽象的には終期となるとしつつ、少なくとも、当面は、統計データ等を参照しつつ、取引数量・価格の状況、具体的な買い控え等の発生状況、当該商品又はサービスの特性等を勘案し、ケースバイケースで合理的に判断することが適当であるとしています。今後、これについて中間指針がどこまで踏み込んだ検討をするかは明らかではなく、現時点では、いつの時点までの損害であるかを明らかにしたうえで請求し、時期を区切って改めて請求するという方針も検討されるべきでしょう。 -
10の2-25【不動産の価値の喪失又は減少と判断できる時期】
まだ、原発事故は収束していませんが、現時点で、不動産の価値の喪失又は減少を理由とした損害賠償請求をしても、認めてもらえるでしょうか。
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1 中間指針(第3の10のⅠ)は、避難指示等による避難等を余儀なくされたことに伴い、警戒区域や計画的避難区域等の対象区域内の財物(不動産を含む)の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の廃棄費用、修理費用等)は、賠償すべき損害と認めています。
そして、中間指針(第3の10のⅡ)は、上記のほか、対象区域内にあって、
① 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
又は、
② ①には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及び除染等の必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認めています。
通常は、修理や除染等によって価値の回復が可能なので、不動産の管理不能を理由に、価値の全部又は一部が失われるようなケースは想定できません。
そこで、不動産については、上記1①又は②の場合によって、価値の喪失又は減少が認められるか否かが問題になると思われます。
2 中間指針(第3の10(備考)4)は、上記1の賠償範囲に関し、合理的な修理、除染等の費用は、原則として当該財物の客観的価値の範囲内のものとするとし、修理や除染費用と、当該不動産の価値を比較し、前者が後者を上回る場合には、経済的全損と評価され、後者の範囲内で賠償するとされています。例外的に、合理的な範囲で当該財物の客観的価値を超える金額の賠償も認められ得るとし、中間指針は、この例外的な場合として、文化財、農地等代替性がない財物を挙げていますが、文部科学省による中間指針に関する解説では、「財物の代替性」の判断に関し、宅地や住宅も、個別の事情によっては当たり得るとしています。
また、中間指針は、避難区域に限っていますが、文部科学省による中間指針に関する解説では、中間指針に記述のない避難指示等区域「外」の不動産価値の喪失又は減少や除染費用等であっても、直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて賠償対象と認められることがあり得ると言及しています。
3 ところで、そもそも、財物の価値を喪失又は減少させる程度の放射性物質の量とはどの程度を言うのか、明確ではありません。100ミリシーベルトを被曝すると、がんによる死亡率が0.5パーセント上がるとも言われていますが、一定量以下の被曝であればリスクはないというしきい値の有無につき、意見が分かれている状況です。事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある区域が計画的避難区域とされても、同量の放射線を長期間浴び続けた場合の健康被害のデータがありません。
また、警戒区域は、一時立入り(一時帰宅)が認められているだけで、放射性物質の量を測定することもできません。
しかし、警戒区域や計画的避難区域に存在すれば、一定の放射性物質の曝露が事実上推定されます。また、建物を洗う、樹木を剪定する、放射性物質の付着した表土を取り除くといった除染作業は、これらの避難区域であれば、相当な費用がかかることが想定されます。特にこれらの地域のみならず、解除された緊急時避難準備区域においても、山間部の森林が多く存在しており、森林の全てを剪定し、腐葉土を除去して除染することは不可能又は困難で、除染費用が、不動産(山林)の客観的価値をはるかに超えると思われます。
避難区域はもちろん、避難区域外でも相当程度の放射性物質の曝露が認められ、除染が不可能、あるいは見積をとって高額な除染費用を要し、不動産の客観的価値を超えると認められる場合には、警戒区域や計画的避難区域が解除されなくとも、現時点で、不動産の価値は経済的に全損であると解することも可能であると思われます。
4 そして、上記1②のように、避難区域外で、かつ相当程度の放射性物質の曝露が認められなくとも、現時点で、風評被害により、当該不動産を売り出しても、風評被害により価格が低下し、あるいは買い手が付かず売買取引が成立しないという事実が認められれば、経済的に全損又は一部喪失を理由に、損害賠償を認めることも可能と考えられます。避難区域の路線価をゼロと見なして申告できるという方針も打ち出されているところです(Q10の2-26【不動産の価値の評価方法】参照)。
不動産に関する損害ではありませんが、風評被害を認めた裁判例として、「原発事故・損害賠償マニュアル」日本加除出版Q77を参照してください。
5 なお、東京電力は、不動産の価値の喪失又は減少に関する損害については検討中とするにとどめています。
また、環境省は、平成23年12月、除染関係ガイドラインを策定し、長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目指すとしています。
そして、政府は、平成23年12月16日、本件原発事故の収束宣言を行いました。この宣言を受け、政府は、警戒区域と計画的避難区域を、新たに3つに再編する検討に入り、年間の積算放射線量に応じて50ミリシーベルト以上を「長期帰還困難」(数十年間帰宅できない可能性のある地域)、20~50ミリシーベルト未満を「居住制限」(数年間居住が難しい地域)、20ミリシーベルト未満を「解除準備」(近い将来帰宅が可能な地域)の3区域とする方向で、関係自治体と調整しています。 Q10-1【【避難指示等の法的根拠】参照の9、10を参照してください。
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10の2-26【不動産の価値の評価方法】
不動産の価値は、どのような方法で評価するのですか。例えば、単に土地の時価というだけではなく、農地などの場合には作物を生産できるという付加価値がある場合、付加価値分を土地の時価に上乗せしてもらえるのでしょうか。
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1 不動産の価値の評価方法
中間指針(第3の10(備考)5)は、損害の基準となる財物(不動産)の価値については、原則として、本件事故発生時点における財物の時価に相当する額とすべきであるが、時価の算出が困難である場合には、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従った帳簿価額を基準として算出することも考えられるとしています。
また、文部科学省による中間指針に関する解説では、減価償却が終わった資産につき、簿価を基準として財物価値を算出することが適切か否かも、個別具体的に判断されるとされています。
そして、一般的に、資産の時価とは、その資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額をいいますから、事故前に発表されていた地価、路線価等を参考にします。また、路線価の定められていない地域は、評価倍率表などに基づき、事故前の時価が算定されることになります。
他方、事故後の当該不動産の価値については、平成23年9月20日、国土交通省は、同年7月1日現在の 都道府県地価(基準地価)の調査結果を発表し、原発事故が収束していない福島県は下落幅が拡大したという指摘がされました。
さらに、平成23年11月1日、東日本大震災による被災地の地価の下落を路線価に反映させる 調整率が発表されました。これは、土地の相続、贈与を受けた人の税負担を軽減させる措置ですが、これも参考になると思われます。
なお、上記発表のいずれも、福島第1原発事故による警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域は、土地の利用価値を正しく評価できる環境にはないとして調査対象から外しており、どの程度価値が下落したのか、正確に把握できないというのが実態ですが、この地域の相続、贈与を受けた人の税負担算定の調整率については「ゼロ」とみなして申告できるという方針が打ち出されていますので、参考にしてください。
ところで、東電が被害者からの賠償請求を受け付けるために配った書類にも不動産について触れておらず、検討中とされており、現在行っている賠償は、当面の生活を維持するための収入の目減り分や精神的苦痛への賠償などに限られています。
この点、平成23年4月30日、国税庁は「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」および「東日本大震災関係諸費用(災害損失特別勘定など)に関する法人税の取扱いに係る質疑応答集」を公表していますが、その中で「被災資産の構造検査などを実施して被災事業年度等終了の日における時価を厳格に評価することが困難な場合も考えられ、このような場合には、例えば、損壊等をした建物について建築業者など一定の専門知識を有する者が行った見積りによるなど、合理性があると認められる金額であれば、被災事業年度等終了の日(災害のあった日の属する事業年度等の終了日)における時価として取り扱われる。」と言及していることからしても、個別に不動産業者に算定を求める方法も必要になると思われます。
2 賠償の範囲について
中間指針(第3の10(備考)4)は、賠償を認める財物(中間指針第3の10(指針)1ないし3)の賠償範囲に関し、合理的な修理、除染等の費用は、原則として当該財物の客観的価値の範囲内のものとするが、文化財、農地等代替性がない財物については、例外的に、合理的な範囲で当該財物の客観的価値を超える金額の賠償も認められ得るとしています。
この点、客観的価値の範囲内という考え方は、修理や除染費用と、当該不動産の価値を比較し、前者が後者を上回る場合には、経済的全損と評価され、後者の範囲内で賠償するという意味です。
また、文部科学省による中間指針に関する解説では、「財物の代替性」の判断に関し、中間指針は文化財や農地を例示としてあげていますが、宅地や住宅も、個別の事情によっては当たり得るとしており、最終的には具体的な事情に基づいて個別に判断されることになります。
さて、ご質問のような農地を単なる田舎の土地と評価してしまうと、不当に低い価値となってしまいますが、作物を生産できるという付加価値があり、代替性がないものとして、一定の範囲の上乗せの賠償が認められ得ることになります。ただし、土地の価値として評価するとその上乗せには限界がありますので、不足する分については、営業損害といった別の科目に基づいて賠償請求する方法も考えられます。 -
10の2-27【不動産の全損の賠償と避難費用、固定資産税との関係】
東京電力から、自宅の全損分の損害賠償の支払いを受けた後は、自宅に住めないことによる避難費用を損害賠償請求することはできなくなるのでしょうか。
また、東京電力から自宅の損害賠償請求を受けた後は、東京電力の所有になるのでしょうか。もし、自宅の名義は、私のままだと、固定資産税は、ずっと私が払っていなかければならないのでしょうか。固定資産税相当額は、損害になりますか。火事が出るのも心配です。 -
1 全損分を賠償した後の避難費用
中間指針(第3の10のⅠ、同Ⅱ)記載の条件を満たす場合、現実に価値を喪失し又は減少した部分及び「これに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の廃棄費用、修理費用等)」ないし、現実に価値を喪失し又は減少した部分及び「除染等の必要かつ合理的な範囲の追加的費用」が賠償すべき損害と認めています。
つまり、価値喪失分に加えて「これに伴う必要かつ合理的な範囲の追加費用」に該当するものであれば、認められることになります。
この点、全損分が賠償される場合とは、長期的期間にわたり帰省できないと認定された場合が考えられるところであり、これを踏まえて全損分を算定しているので、当然には避難費用や以後の居住のため発生する継続的な家賃等が認められるものではありません。
しかし、自宅の全損分の賠償といっても、それはあくまで不動産の価値を損失することに対する填補にすぎません。例えば、自宅に帰省できることを予定して仮の居住地で居住していたのに、以後一定期間、当該土地が居住禁止区域に指定されることが確定した場合、新たに他所に定住するための引越費用等であれば、必要かつ合理的な範囲の追加費用として認められる余地があると考えられます。
2 賠償と所有権(固定資産税負担等)の取扱い
全損分の賠償がなされた場合でも、全損とは「経済的全損」を前提としているため、必ずしても当該不動産の価値がゼロになったとは限りません。まして、価値減少に対して被害弁償される場合は、一定の残存価値があることが前提となります。そして、被害弁償とはあくまで被害に対する補填であり、不動産の買い取りを意味するものではありません。
このような場合、所有権は、当該不動産の所有者に残るのが通常です。よって、固定資産税も所有者が負担することになります。そして、一定の価値がある不動産を所有する以上、固定資産税は所有者が負担するべきものになりますので、この固定資産税相当額を損害と評することはできません。
この点、政策上、福島第1原発付近の不動産の固定資産税等は免除されているので、現段階では、この費用が直ちに発生するわけではありませんが、この措置がいつまで続くのか明らかではなく、この政策が終了すれば、やはり固定資産税の費用負担が発生することになります。 当該不動産の所有者が法人の場合には、法人税法33条、法人税法施行令68条において、資産が災害等による著しい損傷により資産価額が帳簿価格を下回る場合には、その減額分について、当該事業年度の所得金額を計算する上で、損金算入ができると定められていますので、このような損金算入手続により税金負担が軽減することも可能です。
しかし、全損分の被害弁償がなされる場合とは、以後一定期間、当該土地が居住禁止区域に指定され、所有していても実際には使用できない場合が想定されます。
これに対し、望郷の念が強く、どうしてもその土地を手放したくないと考える住民が存する一方で、居住もできない不動産のために固定資産税の負担をさせられることや、火事等の懸念等から不動産を買い上げを望む声も多く、各位の意向を尊重できる仕組みが必要です。
それゆえ、今後は、法律を制定して、国や東京電力等による不動産の買い上げが選択できることも必要だと考えられます。
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10の2-28【動産の価値の評価方法】
避難区域内の自宅に着物が残してありますが、もう着ることはできません。母の形見の着物もあります。東京電力に損害賠償請求をしたいのですが、請求するには、どういう資料が必要ですか。また、どのくらいの金額が認められますか。
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まず、ご質問の着物につき東京電力に対し損害賠償請求ができるかどうかが問題になります。着物自体が破損されて物理的に着用不能になったのではないからです。この点、原子力損害賠償紛争審査会による中間指針(以下、中間指針という)においては、避難区域内の動産の価値の喪失について、①避難等を余儀なくされたことに伴い、財物の管理が不能になった場合、または②財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に暴露した場合及びそれには及ばないものの平均的・一般的な人の認識を基準として財物の価値の全部または一部が失われたと認められる場合に、現実に価値を喪失し又は減少した部分の損害賠償が認められる旨、記載されています。
ご質問の着物は、避難が長期にわたったことにより、陰干しや防虫などの通常の保管管理ができなかった(上記①)こともありますが、それ以上にご自宅の周囲の放射線量が高く、着物にも放射性物質が付着したと予想されるため、もはや平均的・一般的な人の認識を基準として、「着用する」という着物の価値を喪失したと言える場合(上記②後段)に該たるのではないかと思います。ここで、どの程度の放射線量であれば、「平均的・一般的な人の認識を基準として着用できないと言えるか」、が問題になりますが、例えば、損害賠償請求時点において、国が放射能除染の目安としている1ミリシーベルト/年という放射線量がひとつの基準となるのではないでしょうか。 そして、価値喪失の場合の評価額につきましては、中間指針によれば「原則として、事故発生時点における財物の時価に相当する額とすべき」とされています。着物の場合、時価といっても一点物が多く代替性に乏しいといえ、減価償却はできないもの(むしろ価格が上がる場合もある)と思われますので、まずは購入価格で請求すべきと考えます。
さらにご質問のようにお母様の形見の場合は、形見を失ったことによる精神的苦痛も大きいものと思います。その場合は、財物の喪失とは別項目として、それに伴う慰謝料(精神的損害)が認められるかどうかが問題になります。交通事故の場合には原則物損に関連する慰謝料は認められないものの「特段の事情」がある場合には認められ、原発事故も不慮の事故として交通事故被害とパラレルに考えられることから、ご質問の場合も、「特段の事情」の有無が問題になります。
特段の事情を主張し、慰謝料を請求するのに必要な資料としては、上記述べたようにご自宅に最も近い地点の放射線量測定値、一時帰宅の際に着物の放射線を測定できるのであればその値、着物の写真(なければイラストなど柄や素材などある程度着物の存在と価格を推認できるような資料)、着物の購入価格を示す領収書、クレジット払いの場合は引落し明細などです。加えて、お母様の形見であれば、お母様がその着物を着ていたことの思い出、写真、着物のエピソードなどを書いたメモがあれば、慰謝料の請求に有効です。 -
10の2-29【ペットの死亡】
避難区域からペットを連れてくることができず、一時的に家に戻ったら、かわいがっていたペット(犬)が餓死していました。東京電力に損害賠償請求をしたいのですが、どのくらいの金額が請求できますか。
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ペットを避難区域に放置せざるをえなかったため、餌をやることができず餓死してしまったとのことですから、原子力損害賠償紛争審査会による中間指針(以下、中間指針という)の①の要件(避難等を余儀なくされたことに伴い、財物の管理が不能になった場合。A4をご参照ください)に該たるケースになります。
そしてこの場合の損害の基準となる価値喪失の評価額につきましては、中間指針によれば「原則として、事故発生時点における財物の時価に相当する額とすべき」となっております。当該ペットが血統書付であって、生後まもない、など一般的な交換価値(時価)がある場合は、その額を財産的損害として請求できることになります。
しかし、そのような交換価値を出すことはほとんどの場合、困難でしょう。そこで、財産的損害額の賠償が足りない分を慰謝料という形で補完する、いわゆる慰謝料の補完的機能を使って、ペットの喪失による慰謝料を請求することができます(もちろん、財産的損害額に加えて慰謝料も請求することもできます)。慰謝料請求のためには、ペットの種類、年齢、平均寿命、生育状況などに加えて、質問者がいかにペットをかわいがっていたか、ペットを失っていかにショックを受けているかを示す資料(飼育期間、飼育場所、ペットとの思い出、写真など)を用意する必要があります。なお交通事故の裁判例の多くは、ペットが死亡または負傷した場合の慰謝料の認容額は数万円ないし10万円程度ですが、世話ができないことによる餓死という原発事故特有の精神的苦痛も考慮されるべきでしょう。
また、ペットの葬儀のために費用を支出した場合、当該費用についても財産的損害として請求できます。 -
10の2-30【未回収の売掛金の賠償請求】
原発事故で、得意先が破たんしたため、売掛金が焦げ付きました。焦げ付いた売掛金相当額を、東京電力に損害賠償請求することができますか。
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原子力損害賠償紛争審査会による中間指針(以下、中間指針という)では、「間接被害者の事業等の性格上、第一次被害者との取引に代替性がない場合」を「間接被害」としていますが、得意先が破たんしたことにより、質問者の売掛金が回収不能となった場合をこの「間接被害」に該たるとするのは難しいように思われます。中間指針が間接被害による「営業損害」として「減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用」を明記していることからもわかるように、中間指針が前提としているのは販売先が被災したことによって販売できなくなった減収分であって、回収の見込みが低い売掛金すなわち請求権ではないからです。
しかし、本件原発事故の被害が広範囲にわたり、地域社会全体を崩壊させた点を考えると、崩壊した地域に多くの得意先が存在しており、第一次被害者との取引に代替性がないと言って差し支えがない場合が、多く認められると思われます。
中間指針は、売掛金という請求権(債権)の侵害の場合に損害賠償責任が認められるかという点について、直接的には言及していません。
裁判例では、一定の範囲で債権侵害による不法行為を認めていますが、本件のような責任減少型の債権侵害の場合には、責任を負う範囲を限定するべく、政策的配慮から債権を侵害するについての故意がある場合のみ責任を認めるという考えがあります。この考えによると、東京電力の故意を認めることができず、ご質問のケースにつき救済がされないことになってしまいそうですが、スリーマイル事故やチェルノブイリ事故のように、原発事故がひとたび起きれば、広範囲に、かつ甚大な被害が発生し得ることは、東京電力も本件事故以前より認識していたため、故意に準じて、かつ原発事故によって通常生ずべき損害として(あるいは予見していた特別損害として)保護され得る等の解釈も可能ではないかと思われます。 -
10の2-31【損害賠償金に対する課税】
福島第一原発の事故により被害を受け、損害賠償金を受領しました。この賠償金に税金はかかりますか。
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以下の損害に対して支払を受けた賠償金には税金はかかりません。
・避難生活等による精神的損害
・生命・身体的損害
・検査費用(人)
・放射線被曝
・避難・帰宅費用
・一時立入費用
・検査費用(物)のうち、家事用資産に係るもの
また、心身の損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかったことによる給与又は収益の補償として受けるものを含みます。
非課税になるものについては、確定申告等の手続きをする必要はなく、確定申告する場合にも申告する書類に含める必要はありません。 -
10の2-32【必要経費を補填するための賠償金と課税】
福島第一原発の事故により受けた被害の賠償金として、事業所得の必要経費を補填するためのものには課税されますか?
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以下の、必要経費を補填するための賠償金については、事業所得等の収入金額になります。
・営業損害のうち、追加的費用に係るもの
・検査費用(物)のうち、業務用資産及び棚卸資産に係るもの
これらの賠償金は事業用所得等の収入金額になりますが、追加的費用等を必要経費として収入金額から差し引くことから、実質的に課税は生じないこととなります。
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10の2-33【事業の減収分に対する賠償金と課税】
福島第一原発の事故による営業損害のうち減収分(逸失利益)に対する賠償金には課税されますか?
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避難指示等により業務に従事することができなかったことやいわゆる風評被害などによる減収分、又は出荷制限指示による棚卸資産等の損失に対して支払を受ける賠償金は、事業所得等の収入金額になります。
これらの賠償金は、事業所得等の収入金額になった上で、減価償却費などの必要経費を控除した残額(所得)が課税の対象になります。 -
10の2-34【給与等の減収分に対する賠償金と課税】
福島第一原発の事故により就労不能となったことによる給与等の減収分に対する賠償金には課税されますか?
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就労不能損害のうち、給与等の減収分(逸失利益)に対して支払を受ける賠償金は、雇用主以外の者から支払を受けるものであることから、一時所得の収入金額になります。
転居費用及び通勤費増加額に対して支払を受ける賠償金は、勤務場所の変更や転職などにより支出した費用の実費弁済として支払を受けるものですので、課税の対象にはなりません。
一時所得の計算方法は、以下の通りです。
[(収入金額-収入を得るために支出した金額)-特別控除額(50万円)]×1/2
※ 特別控除額については、収入金額から収入を得るために支出した金額を控除した残額が50万円に満たない場合は、その残額になります。