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第二十六回渋谷法律相談センターコラム「遺言作成後の生活を見据えた遺言作成を~遺言書作成後の生活状況の変化~」(後編)

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4 上記の例で言えば、遺言者が、不動産の相続以外に遺言書に何の条項も設けていなかった場合には、当該不動産を処分して取得した株式(有価証券)であっても、筆者は、長男に相続させる意思であったと解釈することはできないものと考えています。

もちろん、一方では、不動産を処分してお金になったのであるから、それをもって購入した株式(有価証券)は、元々の不動産同様、長男に相続させる意思であるとの判断もあり得ます。

しかし、民法は996条において、「遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかった時は、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められる時は、この限りでない。」と定めており、遺言者の死亡時点で存在しない財産に関する遺贈を、原則として無効としています。この条文は遺贈に関する条文ですが、遺言によって財産を与えるその他の場合も同様と考えられています。

5 そうすると、上記の例で遺言者が亡くなった時に不動産が存在しなければ、その不動産が形を変えたといっても、当該不動産を処分して取得した株式(有価証券)を長男に与えるという解釈はやはり難しいでしょう。

この結論は、遺言者が任意で不動産を処分してしまったなら、ある程度納得がいく結論です。もし遺言者が不動産を処分しても、その対価やそれにより取得した新たな財産(上記の例での株式(有価証券))を従前の遺言のとおりに長男に相続させたいと考えるならば、その旨を新たに遺言あるいは従前の遺言を変更しておけば良いからです。

ですが、もし任意の処分ではなかったとしたらどうでしょうか?

たとえば、近隣の火事による類焼で消失してしまったとしたら、どうでしょうか。そのために、火災保険から入った保険金をそのまま預金としていた場合はどうでしょうか。預金を取り崩して、上記の例のように株式を購入していたらどうなるでしょうか。

実は、遺言書を作成しても、その後の生活において、遺言者の意思によらないで相続財産も内容や遺言の基礎の内容(たとえば、遺産を与えようとしていた相手方が先に死亡してしまうなど)が変化してしまうことがあります。もちろん、その後の生活の変化や財産状況の変化に応じて、遺言書を新たに作り直したり、変更を加えるというのも一案ですが、それもなかなか面倒です。

遺言書を作成する最初の段階である程度変更が生じることを予想した条項にしておくことが必要ではないでしょうか。

そういう意味では、手前味噌かも知れませんが、一度法律相談のドアを叩いて弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?