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第十五回渋谷法律相談センターコラム「債権回収の難しさと民事執行法の改正」

相手方に対し、損害賠償等の金銭の支払いを求めたい場合、交渉して任意に支払ってもらえれば良いのですが、交渉決裂した場合には民事訴訟を提起して勝訴判決を目指すことになります。仮に首尾よく勝訴判決を得たとしても、直ちに実際に金銭の支払いを受けられるわけではありません。実際に債権を回収するためには民事執行法に規定する所定の手続きにより、相手方の財産に対し強制執行を行うことになります。

強制執行を申し立てるにしても、相手方(以下「債務者」といいます。)が執行対象となりうる財産を特定しなければなりません。債務者の雇用先が判明している場合や債務者が自宅やマンション等の不動産を有する場合には執行対象の財産の特定は容易です。しかし、債務者の雇用先が不明である場合や保有する不動産の所在が不明である場合等、債務者が保有する財産の手がかりが乏しい場合には執行対象財産の特定するための調査には困難が予想されます。

民事執行法には、財産開示手続により直接債務者から債務者の保有する財産の情報を開示させる手続きが規定されています。また強制執行の手続きを弁護士に依頼する場合には、依頼した弁護士を通じて弁護士会照会制度を利用することができ、同制度によって債務者の預金口座を特定する等、執行対象の財産を特定できる場合があります。しかしながら、弁護士会照会によっても執行対象の財産を特定するに至らない場合も多々ありますし、財産開示手続を申立てたとしても、債務者が開示を拒んだ場合のペナルティに実効性を欠くため執行対象財産を特定するに至らないことが多いのが現状です。結果として、裁判で負けたにもかかわらず財産を隠匿する等して強制執行から逃げ切られてしまう場合も少なからずあるのが事実です。

そのような中で、法制審議会では民事執行法の改正が審議されており、平成29年9月8日に『民事執行法の改正に関する中間試案』が公開されました。中間試案の中では、前述の財産開示制度について申立要件の緩和、開示に協力しない債務者に対する罰則の強化、また第三者から債務者財産に関する情報取得制度の新設など、執行対象財産調査の実効性を高める改正案が提案されております。まだ各制度の具体的内容について定まっているわけではありませんが、今回の民事執行法改正により、債務者の逃げ得を許さない制度が実現されることを願ってやみません。