• 2019.08.30
  • 声明・決議・意見書

クレジット過剰与信規制の緩和に反対する会長声明

 経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会は、令和元年5月29日、これまでの審議における議論を「中間整理 ~テクノロジー社会における割賦販売法制のあり方~」(以下「中間整理」という。)としてとりまとめた。
 それによると、包括信用購入あっせん業者の過剰与信規制につき、技術やデータを活用して支払可能な能力を判断できる事業者については、現行法上要求されている支払可能見込額調査(割賦販売法30条の2第1項本文)に代えて、技術やデータを活用した与信審査を許容するという考え方を示した上で、①現行法上要求されている指定信用情報機関の信用情報の使用義務(同法30条の2第3項、割賦販売法施行規則43条1項1号)については、技術やデータを活用した与信審査を行う事業者に対しては一律の義務としては課さないことが適当であると考えられるとしている。
 また、②現行法上要求されている指定信用情報機関の信用情報の登録義務(割賦販売法35条の3の56)については、事業者が技術やデータを活用して与信審査を行う場合であって、極度額が10万円以下のクレジットカードの場合には、その義務を課さないとすることが適当であると考えられるとしている。
 しかし、①については、利用者が他社に対して負担する債務を確認することなく与信を行うことを許容するものであることから、クレジットカード会社は、他社で多重債務状態にある者に対しても、自社の営業判断に基づいて与信することもできる結果となる可能性があり、そのような事態を避けうる技術的・制度的な保証のない現状では、多重債務防止の機能を備えた合理的な与信審査方法とは言い難い。
 また、中間整理を前提にしても、技術やデータを活用して支払可能な能力を判断できない事業者については、引き続き信用情報の使用義務が課されるものであるが、仮に②の措置をとれば、信用情報に登録される情報が限定的となる結果、それらの事業者が行う与信調査の正確性が確保されなくなる危険があり、やはり、不適正与信防止の点から看過できない。
 以上より、当会は、中間整理が見直しの方向性として提示した①、②の措置による過剰与信規制の緩和には強く反対する。

2019年(令和元年)8月30日
            第一東京弁護士会 
会長   佐 藤 順 哉

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