• 2017.06.01
  • 声明・決議・意見書

司法修習生への新しい給付制度を設ける裁判所法改正についての会長声明

 平成29年4月19日、司法修習生への新しい給付制度を設ける「裁判所法の一部を改正する法律」が成立した。この法改正は、衆議院・参議院とも全会一致で成立したように、多くの国民の理解を得て、実現したものである。
 これまで多大なるご協力をいただいた市民団体、消費者団体及び労働団体による「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」や法科大学院生、司法修習生及び若手弁護士らによる「ビギナーズ・ネット」、法改正の成立に並々ならぬ御尽力をいただいた各政党・国会議員の方々、法務省及び最高裁判所等関係諸機関の皆様、更にはこれまで御支援をいただいた諸団体並びに市民の方々に心から感謝申し上げる。
 新しい給付制度は、平成29年度採用予定の第71期以降の司法修習生に対して、基本給付金、住居給付金及び移転給付金を支給しつつ、これに不足する金額は修習専念資金として貸与する制度を併存させるものである。その金額は、最高裁規則によって定められるが、現在のところ、基本給付として一律月額13.5万円を給付するほか、修習期間中に住居費を要する修習生に対しては住居給付として月額3.5万円を給付し、さらに、移転給付が旅費法の移転料基準に準拠して支払われることが予定されている。また、この制度については、継続的かつ安定的に運用していくことが法曹三者において確認されている。
 司法修習を受ける司法修習生に対しては、裁判所法によって修習専念義務が課せられている一方で公務員に準ずる身分にあるとして平成22年度に修習を開始した第64期司法修習生までは給費が支給されてきたが、平成23年度の第65期司法修習生からは貸与制に移行した。ところが、この間、法曹人口は大幅に増加したものの、法科大学院修了者の司法試験合格率の低迷や若手法曹の経済事情の悪化などが相まって、法曹志望者は大幅に減少しており、法曹となる人材の確保に懸念がもたれている。
 法曹志望者の大幅な減少は、法曹養成制度が危機的な状況にあることを意味するだけでなく、同じ給源を持つ裁判官、検察官、弁護士によって構成される法曹界全体にとって共通の深刻な問題であり、早急な改善策の実現が求められている。
 今回の法改正は、法曹志望者の減少に対応するものとして、法曹志望者の減少に歯止めを掛ける一要素となることが期待されるが、以下述べるような不十分な点が残る。
 戦後はじまった司法修習の給費制をはじめとする国費による法曹養成制度は、社会の人的インフラである法曹について、裁判官となる者、検察官となる者に限らず、弁護士となる者についても等しく国費により養成するものであり、法曹の質の維持向上のために大きな成果を上げてきたことはもちろん、法曹の社会的責任の醸成や法曹三者の相互理解の基盤として極めて有益な役割を果たしてきたし、今後も果たしていくことが期待される。
 ところが、貸与制が併存していることからも明らかなとおり、今回の給付額は決して十分な金額とはいえないものであり、司法修習生の生活を保障して、修習に専念して充実した修習を行わせるためには、給付額の増額が必要である。また、給与としては位置づけられていないため、給与所得ではなく雑所得として課税され、裁判所共済への加入も認められていないことについても改められるべきである。
 ところで、今回の新しい給付制度が実現するまでの間に、貸与制の下で司法修習を受けた者は全国の約4万人の法曹のうち1万人を超える。貸与を受けた者は200万円以上の債務について、修習終了後5年間据え置きの後に10年間にわたって年賦で返済していかなければならない。このように貸与制のもと無給で修習を受けた者と給費を受けて修習をした者との間には合理的な理由のない不平等な状況が作出されている。このような状況は、一定の具体的な方策によって解消されるべきである。
 当会は、今後とも弁護士法1条に定められた弁護士の使命を果たしていくとともに、このような不十分な点の解消に向けた活動を引き続き進めていく所存である。


2017年(平成29年)6月1日
              第一東京弁護士会
会長   澤 野 正 明

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