• 2016.03.07
  • 声明・決議・意見書

死刑に関する会長声明

 平成27年12月18日、東京拘置所及び仙台拘置所において死刑が執行された。
 死刑制度の存廃及び在り方については、各人の正義感・国家観・宗教観等に根ざす様々な意見があり、古くから論議されてきている。当会会員の間にも、様々な意見があり、死刑制度廃止に強く反対する当会会員もいる。これらを踏まえ、当会は、委員会を設け、様々な立場から幅広い視点で研究を行い、事実に基づいた深みのある議論をするために、研究成果を平成26年9月に公表した(「死刑を考える」)。当会は、この姿勢を引き続き有している。この前提の下、今年度当会会長として以下のとおり声明する。
 第一に、無辜の処罰が許されないことは当然であり、とくに、死刑事件では絶対あってはならない。我が国とともに死刑を存置しているアメリカ合衆国の連邦最高裁で死刑が合憲とされた州では、死刑が生命をもって贖う特別な刑であることに鑑み、例えば、事実認定と量刑の手続きの分離、陪審員の全員一致などの特別な手続きの存在、弁護人の活動への特別な費用補助、死刑判決に対する必要的な上訴審での審理、死刑確定後の公費による弁護人の選任等が法定され、様々な運用が工夫されている。
 我が国においては、現在、死刑が特別な刑であることを理由とする特別な取り扱いは定められていない。しかし我が国においても、上記のような諸外国の例も参考にして、死刑が特別な刑であることを前提として、審理手続きおよび執行に至るまでの間の制度につき、我が国に適合した法整備を行うことが相当と考える。国に対し、そのための議論を開始することを求める。
 第二に、死刑制度の存廃及び在り方は、社会秩序の維持及び法律制度の改善(弁護士法1条2項参照)に関する重大な問題であり、弁護士は国民に率先して国民と共にこの問題を議論すべき責務を負っている。
 この前提として、死刑制度に関する情報が、弁護士及び国民の間に、持続的かつ安定的に提供され続けることが重要である。前述の「死刑を考える」もこの観点から公表したものである。
 例えば次のような情報は死刑存置の重大な論拠として重要である。現時点での調査では死刑を支持する国民が我が国では圧倒的に多いこと、被害者の命より加害者の命を重く考えることは正義に反するという考えを持つ国民も多いこと、眼には眼を命には命をという罪刑均衡こそあるべき刑事司法であると考える国民もいること、応報感情は人間の自然な感情であること、誤判の恐れがない事案もあると考えられること、出所後に再び殺人を犯した殺人犯も現実に存在すること、死刑に犯罪抑止力があると考えている国民も多いこと、犯罪被害者や遺族の方々に対する国からの支援施策が十分でないことなどである。
 一方、次のような情報も重要である。いわゆる死刑廃止条約といわれる議定書が発効し、国連人権規約委員会は、我が国に対して死刑廃止も含めた十分な考慮を求めていること、EUは死刑廃止が加盟要件で、欧州評議会は、我が国に対して死刑廃止を勧告していること、アメリカ合衆国の19州では既に死刑を廃止し、存置州にも執行を停止している州があること、国連人権規約委員会が、我が国に対し、我が国の死刑に関する運用(死刑執行を当日に告げていること、死刑確定者を独房に収容し心情の安定という理由のもと通信や面会の自由を制限していること)に対して改善を要求していることなどである。
 国は、上記のような死刑制度に関する情報を持続的かつ安定的に提供する態勢を整え、死刑制度の存廃及び在り方について、全社会的議論が引き続き真剣に行われるよう対応すべきである。当会も上記姿勢に基づき引き続き議論に参加する所存である。

2016年(平成28年)3月7日
            第一東京弁護士会 
会長   岡    正 晶

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