• 2014.05.12
  • 声明・決議・意見書

行政書士法改正に反対する会長声明

 日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正して、「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立てについて代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求めて運動を進め、それを受けて行政書士法改正法案が議員立法として国会に提出される可能性がある。しかし、日本弁護士連合会が2012年(平成24年)8月10日に会長声明、2014年(平成26年)4月25日関連諸団体とともに意見書で反対の立場を表明しているように、上記業務を行政書士の業務範囲に加えることは、国民の権利利益の擁護を危うくするおそれがあり、強く反対するものである。
 第一に、行政書士の主たる職務は、行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とした、行政庁に対する各種許認可関係の書類の作成・提出であり、行政庁の違法・不当な行政処分を是正する行政不服申立制度とは、本質的に相いれない。
 第二に、行政庁による監督を受ける行政書士が、行政庁の行った処分に対しその非違を糾すということは、国民の権利利益の実現を危うくするおそれがある。
 第三に、行政不服申立の代理行為は、行政訴訟の提起も十分に視野に入れて行うべきものであるところ、行政書士は、行政訴訟の代理人たる資格がなくその能力担保が充分とはいえない。法律事務処理の初期段階で適正な判断を誤ると、直ちに国民の権利利益を害することにつながりかねない。初期段階において最終的な訴訟段階での結論まで見据え、迅速かつ的確に初期対応することこそが国民の権利利益に資するのである。行政書士が私人間の紛争案件に不当に関与し不適切な処理をしたことによって、依頼者の権利利益が救済されないどころか、かえって被害が拡大したという例が報告されている。行政不服申立ての代理人となるには、より高度な専門性と慎重かつ適切な判断が不可欠である。
 第四に、行政書士の倫理綱領は当事者の利害や利益が鋭く対立する紛争事件を取り扱うことを前提にする弁護士倫理とは異なっており、行政書士において当事者の紛争事件を取り扱うだけの職業倫理が確立しているとは言えない。
 第五に、仮に行政書士が行政不服申立ての代埋権を獲得したとしても、その活動分野は限定されることが予想され、影響は小さいとの指摘がある。しかし、国民の権利利益自体に対する問題を活動分野の大小で計ること自体が大いに問題である。いったん国民の権利利益の擁護が全うされない事態が招来されることになれば、それは国家百年の計を誤ったということになりかねない。
 第六に、弁護士は行政手続業務を担っていないとの指摘もあるが、近年では多くの弁護士が代理人として活躍している。たとえば、出入国管理及び難民認定法、生活保護法、精神保健及び精神障害福祉に関する法律に基づく行政手続について日本弁護士連合会が日本司法支援センターに委託して実施する法律援助事業を利用し、行政による不当な処分から社会的弱者を救済する実績を確実に上げている。2014年(平成26年)4月1日現在、弁護士の人数は3万5113人であり、今後も毎年相当数の増加が見込まれている。したがって、行政不服申立の分野に弁護士が今以上に進出していくのは確実であり、行政不服申し立ての分野において国民の権利利益の擁護に支障をきたす懸念は全く存在しない。
 以上のとおり、当会は、行政書士に対する行政不服申立代理権の付与には強く反対するものである。

2014年(平成26年)5月12日
            第一東京弁護士会 
会長   神   洋  明

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