• 2013.05.13
  • 声明・決議・意見書

「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」に関する会長声明

 政府の法曹養成制度検討会議における「中間的取りまとめ」が公表され、現在、パブリックコメントに付されている。当会としては、すでに平成24年2月28日付けで、司法試験の年間合格者人数を当面1500名として、法曹養成制度論と法曹人口に関する政策論との関係を明確にすること、法科大学院の統廃合により総定員を2000名程度とし、法科大学院および大学法学部における法曹養成のためのプログラムを充実させること、法曹資格取得費用の低減化を図ること、司法基盤整備を進めることなどの意見を明らかにしているが、法曹養成制度検討会議における「中間的取りまとめ」は、以下の点において、法曹養成制度に関して現時点で浮き彫りになっている様々な問題への対処が不十分であると言わざるを得ない。
 第1に、法曹有資格者の活動領域の在り方について、今後活動領域拡大に向けた取り組みを積極的に行うことについては賛成であるが、「法務省を始め機関・団体が連携して法曹有資格者の活動領域の拡大を図るための体制の整備について検討する」のみでは不十分である。企業や弁護士などの民間の自助努力に頼るのではなく、まずは法曹養成制度検討会議において、官公庁において積極的に法曹有資格者を採用し、法曹有資格者の関与が適切と思われる分野に次々と人材を投入することから始める必要があることを打ち出すべきである。
 第2に、今後の法曹人口の在り方について、「中間的取りまとめ」が「社会がより多様化、複雑化する中、法曹に対する需要は今後も増加していくことが予想される」と指摘している点については、現状を踏まえれば極めて安易な需要予測と言わざるを得ず、そのように判断した具体的な資料やデータが示されるべきである。また、「中間的取りまとめ」では、これまでの急激な法曹人口の増加によって、どのような法曹が世の中に輩出されているのかについての現状認識が全く欠落している。「法曹の量」だけではない「法曹の質」に対する検証が全くなされておらず、現状のまま法曹人口を増加することによって近い将来に国民が蒙るかもしれない損害等の有無についての言及も全くない点で不十分である。
 さらに、「中間的取りまとめ」が、司法試験の年間合格者数を3000人程度とするとの数値目標を撤回する結論に至ったことについては、遅すぎたという点を除けば評価することができるが、結論として、「現状においては、司法試験の合格者数の数値目標を設けない」としている点については到底賛成することができない。法曹人口とりわけ弁護士人口の増加に見合った法的需要が顕在化しておらず、現実に起こっている新人弁護士の就職難やOJTの機会が奪われていること、さらに社会人からの志願者を含む法曹志願者の減少していることなどの弊害を早期に解消し、「法曹の質」を確保するためにも、今後の数値目標を、まずは1500人程度とする方向を明確に打ち出すべきである。
 第3に、司法修習生に対する経済的支援については、「中間的とりまとめ」では、修習資金の一部給付について様々な意見が出されているにもかかわらず、何らの方向性も示されていない。これは国会において貸与制をとった場合の経済的支援の適切性について付帯決議が出されていることを看過するものである。給費制に戻すなども含め、貸与制につき再考すべきである。
 第4に、法科大学院については、未だ各校において教育の内容や方法に大きなばらつきがあり、そのばらつきは大規模校・伝統校にすら見られることを忘れてはならない。この問題は、法科大学院の規模や所在というよりも、法曹養成のための専門職大学院として備えるべき教育力について、各校がどこまで真剣に取り組んでいるかという意識の差にあると言わざるを得ない。法科大学院の定員削減や統廃合等の組織的な見直しに関し、この点を踏まえ、各法科大学院に対し抜本的な見直しの早期実施を求めることを明示すべきである。
 さらに、法学未修者の教育について、本来、法曹の多様性を確保するために法学未修者のうち特に社会人や法学部以外の学部出身者を受け入れ、法曹として育てることは、法科大学院の重要な使命である。法学未修者に対し、1年次のみならず2年次、3年次においても引き続き基本的な法律科目の習得についてフォローアップができるようなカリキュラムの立案や教育方法の工夫を、法科大学院に求めるべきである。
 第5に、司法試験については、法科大学院においては、志願者が減少するのみならず、入学者の質が低下しつつあるとの指摘がなされているところ、司法試験合格者数はここ数年ほぼ横ばい傾向にある。この点、政策的な法曹人口増員目標によって合格者数を維持することは止めるべきであり、むしろ厳格な成績判定を行い、その結果に基づいて合格者数を決定すべきである。
また、今後多様化する法曹に対するニーズに応えるべきことからすると、短答式試験の出題範囲を限定したり、選択科目を廃止するといった受験者の負担軽減のみを考慮して科目削減を行うことは相当ではない。ただし、基本科目と選択科目の試験内での比重などについては十分な検討を行うべきである。法科大学院における実務導入教育の成熟が遅れており、実務修習の円滑な実施が困難となっている現状に鑑みると、司法試験の各科目の出題内容における実務基礎科目の要素を強めていくことも検討すべきである。
 第6に、司法修習について、今後法科大学院との連携がさらに図られるべきことは言うまでもない。しかし、法科大学院における実務教育の内容にばらつきがあり、司法研修所における「導入的教育」の名の下に行われている「出張講義」も、実務修習を円滑に実施するために十分な内容であるとは言い難い。また、これを補完するために日弁連や各地の弁護士会も「事前研修」を実施しているが、必ずしも統一的には実施されておらず、その内容も十分とは言えない。このような現状を踏まえると、少なくとも法科大学院における実務導入教育が相当程度充実しその効果が確認されるまでの間は、新60期司法修習生に対して実施したのと同様、分野別実務修習を行う前に、司法研修所において司法修習生全員を集めて統一的な導入的教育を行うことが必須のものとして提案されるべきである。
 当会としては、法曹養成制度検討会議が、今後パブリックコメント等を通じて得られる国民各層からの意見を十分に受け止めてさらに検討を進め、最終的取りまとめにおいて、これらの諸問題について抜本的な施策を提言されることを強く求めるものである。

2013年(平成25年)5月13日
第一東京弁護士会 
会長  横  溝  髙  至

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