• 2012.07.04
  • 声明・決議・意見書

「違法ダウンロード刑罰化」に関する著作権法改正についての会長声明

 去る6月21日、違法にアップロードされた有償の音楽・映像の著作物等を違法と知りながらダウンロードする行為に対し、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金又はその併科を想定した、いわゆる「違法ダウンロード刑罰化」を含む著作権法の一部改正案が参議院本会議で可決、成立した。「違法ダウンロード刑罰化」に関する改正著作権法は、本年10月1日から施行される。
 当会は、違法ダウンロードは、コンテンツ産業の健全な成長を阻害するおそれのある由々しき問題であるとの認識を持ちつつも、直ちにこれに刑事罰を導入することに反対する。その理由は、①私的領域における行為に対する刑事罰を規定するには極めて慎重でなければならないところ、私人による個々の違法ダウンロードによる財産的損害は極めて軽微であり、未だ刑事罰を導入するだけの当罰性ある行為であるとは認識されるには至っていないと考えられること、②違法アップロードに対する罰則規定の活用や著作権教育の一層の充実など、他により制限的でない違法ダウンロード規制手段が存在すること、③違法コンテンツのダウンロードを民事上違法とした平成21年改正著作権法の適用の実態を見極める必要があること、などである。
 ところが、上記のとおり、「違法ダウンロード刑罰化」を含む改正著作権法が可決、成立したことは、誠に遺憾である。
 この様な法律の成立には、以下のとおり重大な疑問がある。
 ①インターネットは、公衆の回線を利用するもので、何人も特別の制約なく自由に参加・利用できるものでなければならないから、その利用を制約することは必要最小限でなければならないが、この方向性に明確に反している。
 ②今回の、刑罰によって保護される権利は、個別の著作権であって、私的財産権であり、その個別の被害金額も軽微である。又その利用者の大半であると考えられる青少年は、違法であるか否かの判断能力が低いのであり、いずれの理由からも刑罰化に適していない。
 ③特に問題なのは、この様な国民生活に重大な影響を及ぼす法律改正が、国会において何らの議論もなくわずか1週間の審議で成立することには重大な問題がある。議会制民主主義の自殺行為というべき手法で法律を制定することは断じて認められない。
 今後、当会は、著作権法の当該刑罰部分の廃止を含めて施行状況を注視していくとともに、国会において、この様な立法が行われないよう求めていく。

2012年(平成24年)7月4日
第一東京弁護士会                  
会 長  樋口 一夫

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