• 2012.03.13
  • 声明・決議・意見書

秘密保全法制に関する会長声明

 政府における情報保全に関する検討委員会は、2011年10月7日、次期通常国会(現在開会中の国会)への提出に向けて、秘密保全法制の法案化作業を進めることを決定した。同決定においては、同年8月8日に秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議がとりまとめた報告書「秘密保全のための法制の在り方について」(以下「報告書」という)の内容を十分に尊重することとされている。
 報告書では、立法の必要性に関して、外国情報機関等に対する情報漏えい、および、IT技術やネットワーク社会の進展に伴う情報流出などを理由に、現行法制による情報漏えいを防止する制度の整備が十分でないものと指摘されている。しかし、抽象的な指摘に過ぎず具体的危険性の検討が不十分であり、かつ、報告書に掲げられている過去の主要な情報漏えい事件の8件は、いずれも現行法で規制が可能なものであり、微罪処分が多く含まれるものである。現行法制による規制に加えて、国民の権利を規制する秘密保全法制を整備する必要性を唱える報告書に対しては、基本的人権擁護の上から重大な疑念を持たざるを得ない。
 報告書が整備を求める秘密保全法制においては、秘密事項の対象となる特別秘密として、国の安全や外交のほか公共の安全および秩序の維持を挙げているが、これらは極めて広範であり曖昧な概念となりかねないものである。さらに特別秘密の指定の方法によっては恣意的な運用の危惧がぬぐい去れない。また、罰則規定にこのような曖昧な疑念を持ち込むことは罪刑法定主義の原則を逸脱するおそれがある。
 さらに、報告書において、特別秘密情報の取扱者を選定するための人的管理として適性評価制度の設置が予定されている。この選定手続きはプライバシー侵害のおそれが高い調査が予定され、その対象も一般の市民や大学などに及ぶほか、家族を含む身辺調査を採用するなど、極めて広範であり、人権侵害のおそれの高いものである。
 そもそも、国民主権の下、政府が保有する重要な情報は国民のためにあるものである。国民主権の理念を忘れた情報管理統制は民主主義の根幹を否定するものになりかねない。我が国では、沖縄返還時の密約が長年にわたって秘匿されたり、昨年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故に伴う情報の開示が不十分であるなど、政府が保有する情報の国民に対する開示が不十分な現状にあることが指摘されて久しい。その現状に加えて、報告書が求める秘密保全法制が整備された場合、国民の知る権利に対する侵害は甚だしく、民主主義の根幹である報道の自由や取材の自由が著しく制限される可能性のあることは容易に推測できるところである。
 よって、報告書が求める秘密保全法制に反対し、国民における議論が十分になされないままに秘密保全法制に関する立法が拙速に行われることがないように強く求めるものである。

2012年(平成24年)3月13日
第一東京弁護士会                  
会 長  木津川 迪洽

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