• 2012.02.02
  • 声明・決議・意見書

各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議

 当弁護士会は、わが国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、2008年の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見をはじめとする各条約機関からの相次ぐ勧告をふまえ、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した、真に政府から独立した国内人権機関の設置を政府及び国会に対して強く求める。
 以上のとおり決議する。

                                2012年(平成24年)2月2日
第一東京弁護士会


決議理由

1 個人通報制度について
 個人通報制度とは、人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘わらず、国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合、被害者個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し、救済を求める制度である。この個人通報制度を実現するためには、各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。
 残念ながら、日本の裁判所は、人権保障条項の適用について積極的とはいえず、民事訴訟法の定める上告の理由には国際条約違反が含まれず、国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている。そのため、各人権条約における個人通報制度が日本で実現すれば、被害者個人が各人権条約上の委員会に見解・勧告等を直接求めることが可能となり、日本の裁判所も 国際的な条約解釈に目を向けざるを得ず、その結果として、日本における人権保障水準が国際基準にまで前進し、また憲法の人権条項の解釈が前進するなどの著しい向上が期待される。
2 国内人権機関の設置について
 国連決議及び人権諸条約機関は、国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され、その回復が求められる場合には、司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており、多数の国が既にこれを設けている。
 国内人権機関を設置する場合、1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に沿ったものである必要がある。具体的には、法律に基づいて設置されること、権限行使の独立性が保障されていること、委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性を保障されていること、調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。
 日本に対しては、国連人権理事会、人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に、早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされており、また、国内の人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。
 現在、わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが、独立性等の点からも極めて不十分な制度である。
 このような状況の中で、日本弁護士連合会は、2008年11月18日、パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。
 また、法務省政務三役は、2010年6月22日、「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において、パリ原則に則った国内人権機関の設置に向けた検討を発表し、さらに、2011年8月2日には、「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」(以下、「基本方針」という。)を発表した。
 基本方針は、パリ原則に準拠した人権救済機関(仮称「人権委員会」) を設置するために、その組織のあり方、人権委員会の権限などについて方 針を明らかにしたものであり、人権委員会を、人事権及び規則制定権を持ついわゆる3条委員会としている点などで、パリ原則に準拠した国内人権 機関の設立に向けた第一歩と評価することができる。
 しかし、基本方針に対しては、日本弁護士連合会から、2011年8月19日、人権委員会の独立性の確保、人権委員会の任務、人権救済の対象と方法及び人権擁護委員制度について修正すべき点や追加すべき点の意見が発表されており、当弁護士会も、2011年9月26日、基本方針で提言されている人権委員会について、パリ原則に準拠した独立性が確保されるべきである旨の会長声明を発表した。
3 当弁護士会は、わが国における人権保障を推進し、また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く採用し、パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関をすみやかに設置することを政府及び国会に対して強く求めるものである。

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