• 2011.05.30
  • 声明・決議・意見書

布川事件再審無罪に関する会長声明

 水戸地方裁判所土浦支部は、平成23年5月24日、いわゆる「布川事件」について、櫻井昌司氏及び杉山卓男氏に対して無罪を言い渡した。
 この事件は、両氏が代用監獄において虚偽の自白を強要され、あいまいな目撃供述とその自白によって、公判請求のうえ有罪認定がされたものである。両氏は確定一審第一回公判以降43年間にわたり無罪を主張し続け、今般、裁判所がようやくその訴えに応えた。時間はかかったが、正義が実現されたことをまずは評価したい。
 当会は、検察官に対して、この判決を真摯に受け止め、控訴することなく、両氏を犯人の汚名から解放するべきことを求める。
 また、この事件は、弁護士会が刑事司法において改善すべきであると提言してきたところが、冤罪防止のために不可欠であることを示したものといえる。
 両氏の虚偽自白は、別件逮捕・勾留を利用した長期間にわたる長時間の代用監獄における取調べに起因する。また、確定審は、両氏に対する取調べの一部を録音したテープについて、自白の任意性を肯定する証拠にしていたが、土浦支部は、全過程を録音したものではなく、他の供述調書に書かれた内容を繰り返したものにすぎず、自白と独立した証拠価値を認めることは困難とした。また、本件再審請求審において櫻井氏の供述を録音した別のテープが開示されたが、このテープには編集の痕跡が存在することが判明し、自白の任意性に対する疑いも生じている。以上の布川事件の実例からみても、現在施行されている取調べ過程の一部録音・録画が危険であることは明らかである。さらに、本件の再審請求審において、相当数の検察官手持ち証拠が開示され、それが無罪の有力証拠となったのであり、公平な裁判のためには、検察官手持ち証拠の全面的開示が不可欠であることが示された。
 当会は、代用監獄の廃止、取調べの全過程の録音・録画による可視化、全面的証拠開示の実現等の刑事司法の改革に全力を尽くす決意を新たにするとともに、各弁護士の捜査段階の弁護活動の質を一層高めるべく取組み、冤罪防止に努めることを表明する。

2011年(平成23年)5月30日
第一東京弁護士会                  
会 長  木津川 迪洽

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