• 2010.01.05
  • 声明・決議・意見書

布川事件再審開始決定の確定に関する会長声明

 昨年12月14日、最高裁判所第2小法廷は、日本弁護士連合会が全面的に支援してきた請求人櫻井昌司氏および同杉山卓男氏に係る再審請求事件(いわゆる「布川事件」)について、平成20年7月14日東京高等裁判所がした即時抗告棄却決定に対する検察官の特別抗告を棄却し、これによって請求人らに対する再審開始決定が確定した。
 本件は、昭和42年8月に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件の犯人と疑われた請求人らが別件逮捕され、代用監獄に勾留中に自白させられたものの、第一審公判開始以来今日に至るまで一貫して無実を叫び続けてきた事案である。
 捜査段階における請求人らの自白は「到底無視することができない顕著な変遷が認められるほか、犯行そのものや犯行に直結する重要な部分に客観的事実に反する供述が含まれており、また、秘密の暴露に当たる供述も認められない」というものであった。また、本件において、請求人らは自白した後、拘置支所に移監された際に一旦犯行を否認し、その後再度警察署に身柄を移されて再び自白するという供述経過をたどったが、東京高等裁判所は、一旦否認した請求人らを再度代用監獄に勾留して行った取調べについて「請求人らに虚偽自白を誘発しやすい環境に置いた」ものであり、冤罪を招いた一因となったと指摘している。
 最高裁判所の決定は、このような東京高等裁判所の判断を維持したものであり、40年以上もの長きにわたり苦しんできた請求人らの冤罪を晴らすものとして高く評価することができる。他方、このような冤罪を招いた捜査や刑事裁判手続に関しては、厳しい反省と抜本的な改革が求められる。
 すなわち、代用監獄に長期間勾留したうえでの取調べや自白偏重という捜査手法を改める必要があるばかりでなく、取調べの全過程の録画・録音によって適正手続を担保する必要性が改めて明らかになった。また、再審段階に至って初めて検察官から開示された新証拠により、確定判決を維持することができなくなったことから考えても、刑事裁判手続における証拠開示の徹底が重要であることが浮き彫りにされた。
 当会は、全面証拠開示、代用監獄の廃止、取調べ全過程の可視化等冤罪を招く恐れがある捜査手法や裁判手続の抜本的な改革を実現するために引き続き全力を尽くす所存である。
 また、今般再審開始決定が確定した請求人らの名誉を一刻も早く回復するために、早急に無罪判決が言い渡されることを強く要望する。

2010年(平成22年)1月5日
第 一 東 京 弁 護 士 会
会 長  田 中  等

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