• 2009.10.09
  • 声明・決議・意見書

東京地裁第2号裁判員裁判事件に関する会長談話

 東京地方裁判所における第2号裁判員裁判事件(強盗致傷等被告事件)の審理が10月6日から始まり、8日に判決が言い渡されました。この事件を担当した2名の国選弁護人はいずれも当会会員であり、本件は当会所属の会員が担当した裁判員裁判事件の第1号となりました。また、本件は中国国籍を有する被告人が、コンビニエンスストアにおいて店員の頭部を金槌で殴打し全治2週間の傷害を負わせた強盗致傷事件と出入国管理及び難民認定法違反事件(7年間の不法残留)とが併合審理されたものですが、通訳人が介在した裁判員裁判事件としては東京地裁での第1号事件となりました。

 公判運営に関しては、弁護士会側がこれまで強く主張してきた手錠・腰縄を裁判員入廷前に解錠し、退廷後に施錠する扱いは認められましたが、被告人の着席位置を弁護人の隣とする扱いが認められなかったことは遺憾に思います。

 判決は懲役5年の実刑判決でした(求刑は懲役7年)。本件犯行は8年前に行われた犯罪行為であるため、改正刑法が適用されず、強盗致傷罪の法定刑の最下限が懲役7年となり、酌量減刑しても執行猶予が付かない事案でしたが、示談が成立し、また寛大処分を求める被害者の上申書が証拠として提出されていたことに鑑みれば、従前の量刑感覚からすると若干厳しい量刑であったという印象は否定できません。しかし、一般市民の量刑感覚を刑事司法に取り入れることもまた裁判員裁判の目的の一つであり、結果については厳粛に受け止める必要があると思います。

 裁判員制度は裁判に国民の意思を反映させるという司法の民主化を実現する画期的な制度であり、司法改革の中核をなすものであります。実際の裁判員裁判はまだ始まったばかりで、司法関係者はもとより、国民の間にもまだまだ戸惑いがあるようにも思えますが、今後回数を重ねるごとに、国民の理解も深まっていくものと思われます。また弁護士会としては、裁判員裁判の問題点や改善点を検証し、よりよい制度を実現するために努力していく所存です。

平成21年10月9日
第 一 東 京 弁 護 士 会
会 長  田 中  等

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