• 2009.03.23
  • 声明・決議・意見書

障がいのある人の権利条約の批准と国内法整備を求める会長声明

 政府は、障害のある人の権利条約(以下、「権利条約」という。)の批准に対する承認を今国会に求める方針である。権利条約は、障がいのある人に対する差別の禁止などを通じて障がいのある人にも基本人権が等しく保障される体制を構築することを締約国に求めるものであり、その批准を歓迎すべきものである。

 しかし、権利条約批准にあたっての国内法整備は、極めて不十分である。
 即ち、権利条約は、障がいのある人に対する合理的な配慮を行わないことも差別にあたると明記したうえで、生活のさまざまな場面で生じる障がいを理由とする差別を排除するための立法上の措置を行うこと、権利条約実施の促進、保護、監視にあたる国内モニタリング機関を設置することなど、日本には未だ例のない人権保障システムの構築を締約国に求めている。

 これに対して政府は、権利条約批准の承認と併せて、合理的配慮を行わないことを含むいくつかの類型の差別の定義規定を設ける障害者基本法の改正を行い、障害者基本法24条に定める中央障害者施策推進協議会の機能を拡大させる改正を行うことによって国内モニタリング機関の機能を持たせることができるとしている。しかし、障害者基本法は、国や自治体などの施策のあり方を定めるものとして制定されたものであって、改正によって差別のいくつかの類型が定められたとしても、障がいのある人に対して、差別を排除する具体的な権利を認めるものではない。また、中央障害者施策推進協議会は、恒常的な組織体制を持たないばかりか、人事及び予算の面からの独立性が担保されておらず、救済の権能も有しておらず、人権救済機関としての実態を有するものとはなっていない。

 当会は、権利条約批准とあわせてこのような不十分な国内法の整備を行うことによって、権利条約が求めている人権保障システムの構築を先送りする結果となることを懸念するものである。

 当会は、権利条約が締約国に求める人権保障システムの基本的枠組みを早期に確立するため、国に対し、批准と併せて、具体的な裁判規範性を有し、行政救済の仕組みを伴う実体法体系としての差別禁止法を、障がいのある人の実情を踏まえて制定すること、国内モニタリング機関を政府から独立した内閣府の外局として設置し、救済機能を有する恒常的な組織とすることを求めるものである。

2009(平成21)年3月23日
第一東京弁護士会
会 長  村 越   進

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