• 2002.11.05
  • 声明・決議・意見書

簡裁判事経験者・副検事経験者に対する「準弁護士」資格付与(案)に反対する決議

1、最高裁判所・法務省の提案する簡裁判事・副検事の経験者に対し、「準弁護士」資格を付与する案については、いずれも導入に強く反対する。
2、簡裁判事・副検事の経験者の活用は、別の分野・方法で行うべきである。
 以上のとおり決議する。

第一東京弁護士会
提 案 理 由

1 最高裁と法務省の提案の骨子
 最高裁と法務省は、簡裁判事・副検事の経験者に対して弁護士資格を付与し、下記の権限を与える旨提案している。

日時 簡裁判事経験者 副検事経験者
民事事件 ①簡易裁判所における、民事訴訟即決和解、支払督促、証拠保全手続、民事保全及び民事調停手続等の代理権
②法律相談(訴額による制限なし)
③裁判外の和解代理(同上)
「刑罰法令に触れる行為による被害の回復に係るもの」
刑事事件 ①簡裁の刑事公訴事件の弁護人
②法定刑に死刑または無期懲役のない事件の公訴提起前の弁護人
③弁護人となった刑事事件の示談
④刑事事件に関する法律相談等
⑤刑罰法令に触れる行為の被害者等の依頼を受けて、刑事に関する手続きを代理すること。
⑥刑事和解(犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律4条)における被害者等の代理
簡裁判事経験者と同じ

2 法曹資格・法曹養成制度からの問題点
 司法制度改革審議会意見書(以下、「意見書」という。)は、法科大学院を中核とする法曹養成制度のもとで、より高い資質・能力を持った法曹を確保するとしている。もとより弁護士は、極めて専門的且つ広範囲な活動を行うものであり、とりわけ刑事事件においては、憲法37条3項において「資格を有する弁護人」が要求されている。

 本提案のように、司法試験、研修所など法曹養成過程を経ずに、限られた権限と経験しか有していない者が、国民の権利義務に直接関わる重大な任務を担うことは適切でない。簡裁は、少額・軽徴な事件を扱うといっても、当事者にとっては重大なことであり、法律の解釈・事実認定のうえで判断が難しい事件も少なくない。準弁護士の資格制度を新設することは、意見書の基本理念に逆行する考え方といわなければならない。


3 国民の混乱と不信
 本提案は、取扱業務の範囲を限定し、資格要件、資質、権限も全く異なる弁護士に準じた資格を新たに創り出すものである。このことは、司法の利用者である国民からみて極めて分かりにくく、混乱や不信を招くことになりかねない。

 また、準弁護士たる資格の付与は、司法書士への訴訟代理権付与のように、国民一般からこれを求める声や、ニーズを聞くことがない。意見書においても、「更に検討すべき」課題というだけで、直ちに資格を付与することを予定していない。司法書士に民事事件に関与することを認めたのは、法曹人口の大幅増加までの当面の必要性・緊急性とこれまでの実績を踏まえてものであり、簡裁判事らにそのようなニーズは認められない。

4 権限に関する問題点
 本提案によれば、捜査段階の弁護事件が、簡裁ではなく地裁に起訴されることとなれば、弁護人を継続することはできず、職責を果たすことはできない。公判段階で弁護人となれない事件について、捜査段階では、死刑・無期懲役以外の広範な事件を弁護できることになる。簡裁から地裁への移送がなされた場合においても同様である。意見書は、捜査段階における弁護活動を特に重視し、捜査・公判を通じ一貫した弁護体制をとるべきことを求めているが、提案では、権限の大小により弁護活動を終了しなければならないことになる。

5 資格取得に関する問題点
 簡裁判事・副検事は、公務員等の一部の職種の者にしか「受験資格」が与えられず、極めて閉鎖的な登用が行われている。受験資格を制限した内部試験でしか登用されない簡裁判事・副検事に準弁護士の資格を付与することは、定年退官者の優遇策、天下り先の確保として国民の批判を招きかねない。司法書士法の改正により、司法書士に一定の訴訟代理連が与えられた現在、司法書士の資格を取得すればよい。

6 弁護士不足の解消について
 最高裁・法務省は、資格付与の理由として、弁護士過疎対策、簡裁民事事件の本人訴訟率の高さの改善、刑事事件を手掛ける弁護士不足の改善などの課題を指摘する。しかし意見書は法曹の大幅増員を求め、司法試験合格者は、平成22年度までに飛躍的に増大し、弁護士人口も大幅な増員となり、これらの課題が解消することは必定である。そうでなくても、地域・分野ごとの弁護士不足の問題は、日弁連・弁護士会が取り組んでいる全国の法律相談センター活動、公設事務所の推進、地域司法改革計画の展開、法人事務所、法律扶助などの活用により、弁護士自らが解決できる。

7 活用方策について
 改正司法書士法の成立により、司法書士及び司法書士法人に簡裁訴訟代 理関係業務を行う途が開かれた。簡裁判事・副検事の経験者は、司法書 士の資格を取得し、簡裁訴訟代理関係業務を行うべきであり、専門性が 十分に活用できる。また民事・家事の調停委員、参与員、ADRなど、裁 判所・検察庁等の研修所の教官、法律事務所のスタッフ、更には学校教育 の分野での活用が十分に考えられる。

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