• 2006.05.19
  • 声明・決議・意見書

金融商品取引法案(証券取引法の一部を改正する法律案等)に対する会長声明

 現在参議院で「証券取引法等の一部を改正する法律案」、「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」(以下合わせて「金融商品取引法案」という。)を審議中である。同法案は、消費者保護の拡充を目的とするものであるが、看過し得ない問題点が多く、日本弁護士連合会は、その国会審議に先立ち本年3月24日、5つの問題点を指摘した意見書を提出した。しかるに同法案は修正されることなく衆議院で可決された。当会は、参議院における本法案の審議にあたり、特に重要な2点に絞って、以下の通り修正を求める。

1 すべての金融商品につき、不招請勧誘を原則として禁止する規定を設けること。少なくとも勧誘被害のきわめて多い商品先物取引については、不招請勧誘禁止規定を定めること。
 金融商品取引法案においては、「政令で定める」特定の金融商品に限って、電話・訪問による不招請勧誘(取引を希望していない消費者に対する勧誘)を禁止している(金融商品取引法案第38条3号)。
 しかし、元本欠損のリスクを内包する金融商品には押しかけ販売はそぐわず、すべての金融商品につき原則として不招請勧誘を禁止すべきである。商品先物取引等をはじめとする投資被害の大半が不招請勧誘に端を発している事実は、弁護士会の調査や相談結果から明らかであり、被害者が金融サービス業者の不招請勧誘に幻惑されて、仕組みやリスクを理解できない取引に巻き込まれ深みにはまっていくという投資被害の実態を直視したうえで、これに対する法的規制をすべきである。

2 商品先物取引には、示談交渉の拒否理由に悪用される損失補填の禁止規定を削除すること。
 金融商品取引法案においては、従来の証券取引法にあった損失補填の禁止の規定がそのまま置かれるとともに(金融商品取引法案第39条)、審議会での議論を経ることなく、商品取引所法においても横並びで損失補填の禁止規定が突如として追加された(商品取引所法改正案第214条の2)。
 しかし、損失補填の禁止の規定は、従来から、被害に遭った投資家が被害回復を求めて損害賠償を求めた場合に、業者から示談解決拒否の口実に使われるという弊害が顕著であった。また、証券取引においては、平成3年に証券不祥事で大口顧客のみへの損失補填が大きな社会問題になったことから立法されたもので、商品先物取引についてはそのような前提となる立法事実はなく、弊害が予想される損失補填禁止の規定を新たに置く必要性はない。
 よって、当会は、本法案につき、上記のとおり修正を求める。

以上

2006年(平成18年)5月19日
第一東京弁護士会
会 長   奈 良 道 博

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