• 2004.08.24
  • 声明・決議・意見書

「弁護士報酬敗訴者負担制度についての政府案」に反対する声明

 政府が、第159回通常国会に提出した「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「政府案」という。)は、今秋の臨時国会において再び審議される。
 政府案は、裁判になった後に、当事者双方に訴訟代理人がついている場合において、当事者双方が合意の上裁判所に共同して申立てを行ったときは、弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させる制度を導入しようとするものである。
 しかし、政府案によると、労働者・消費者など弱い立場に立たされている側が、事実上弁護士報酬負担の合意を強要されあるいは拒否できない事態が生じうることが危惧される。さらにこのような制度が導入されれば、私的な契約や約款などに、「勝訴者が支払うべき弁護士報酬を敗訴者が負担する」旨の条項(敗訴者負担条項)が挿入され、その条項に基づき敗訴者が勝訴者から弁護士報酬を請求されるおそれがある。
 このような制度のもとでは、消費者、労働者、中小零細業者など弱い立場にある者は、敗訴した時の弁護士報酬負担を恐れて、訴訟を提起することや応訴することをためらうこととなり、結果として、市民の司法へのアクセスに重大な萎縮効果を及ぼすこととなる。
 したがって、合意による敗訴者負担制度の導入が、司法アクセスを阻害することを防止するために、少なくとも以下のような立法上の措置が不可欠である。
① 消費者訴訟、労働訴訟及び一方が優越的地位にある事業者間の訴訟など、構造的に格差の認められる当事者問の訴訟においては、合意による敗訴者負担制度を適用しないこと。
② 消費者契約、労働契約(労働協約、就業規則を含む。)及び一方が優越的地位にある事業者問の契約など、構造的に格差の認められる当事者問の私的契約・約款等に盛り込まれた敗訴者負担の定めは、無効とすること。
 当会は、政府案に反対し、上記の立法措置が講じられない限り、これを廃案とすることを求めるものである。
以上のとおり声明する。

2004(平成16)年8月24日
第一東京弁護士会
会長  東谷 隆夫

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