• 2004.02.06
  • 声明・決議・意見書

裁判員制度に関する会長声明

1 政府は、司法制度改革推進本部「裁判員制度・刑事検討会」において本年1月29日に示された裁判員制度に関する骨格案をもとに、その法案化を進めており、本通常国会での成立を目指している。

2 司法制度改革審議会意見書は、わが国社会において、「統治主体・権利主体である国民が、司法の運営に主体的・有意的に参加」することを国民の役割とし、「国民主権に基づく統治構造の一翼を担う司法の分野においても、国民が、自律性と責任感を持ちつつ」、「国民のための司法を国民自らが実現し支えていくことが求められる」として、裁判員制度を提言したものである。
 従って、裁判員制度の基本理念は国民主権にあり、国民自治・自律の精神が活かされ、且つ統治主体意識に根ざすものでなければならない。

3 そのような観点からは、前記骨格案は、なお幾つかの問題点を内包しており、前記審議会意見書が強調した国民主権の理念に十分副うものにはなっていない。

4 審議会意見書の理念に従って、国民が参加しやすく、分かりやすく、参加の意義を実感できる制度とすべきであり、とりわけ、制度設計上特に留意すべき点は以下の点である。
(1) 裁判官と裁判員の構成比については、少なくとも裁判員の数を裁判官の数の3倍以上とすべきである。
(2) 証拠調べに関しては、証人を中心とし、供述調書に関しては、その作成のための取調過程を録画するか、あるいは取調べに弁護人の立会を認めるなどの制度改革がなされなければならない。
(3) 守秘義務については、評議における個々人の意見、評決等職務上知り得た他人の秘密に限定し、その違反に対する罰則も罰金刑のみとすべきである。

5 なお、裁判員制度を導入するには公判期日の連日的開廷が不可欠である。そうして、連日的開廷のもとで被告人が防禦権を十分に行使するためには弁護人との密接な打ち合わせが必要であり、そのためには被告人に対する保釈許可基準を緩和するか、身体拘束中の被告人との夜間・休日接見を認める等の抜本的改革が必要である。

6 政府及び与党は、審議会意見書の理念を尊重し、是非とも今次通常国会において国民が主体的・実質的に参加できる裁判員制度の実現を図るべきである。

平成16年2月6日
第一東京弁護士会
会長  軍司 育雄

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