声明・決議・意見書
各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入とパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める会長声明
日本は、国際人権(自由権)規約、国際人権(社会権)規約などの人権条約を批准しあるいはこれに加入しているにもかかわらず、個人通報制度を未だ導入していない。また、国連の採択した「国内人権機関のあり方に関する原則」(以下、「パリ原則」という。)に準拠した政府から独立した国内人権機関も、日本では未だに設置されておらず、国際人権(自由権)規約委員会などの人権諸条約機関からは、日本に対して、個人通報制度の導入と国内人権機関の設置が勧告されている。
個人通報制度は、各人権条約が締約国内において実効的に実施されるための制度であり、国内人権機関は、憲法その他国内諸法令に表されている人権規範を実現するとともに、各人権条約を国内において実施するという役割を担うものであって、共に早急に導入・設置がなされなければならない。
然るところ、法務省の政務三役は、2011年(平成23年)8月2日、「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」(以下、「基本方針」という。)を発表した。
基本方針は、パリ原則に準拠した人権救済機関(仮称「人権委員会」)を設置するために、その組織のあり方、人権委員会の権限などについて方針を明らかにしたものであり、人権委員会を、人事権及び規則制定権を持ついわゆる3条委員会としている点などで、パリ原則に準拠した国内人権機関の設立に向けた第一歩と評価することができる。
しかし、基本方針は、人権委員会を法務省の外局として設置するとしており、委員会が、法務省内局が抱える刑事収容施設、入管の収容施設などからの救済申立を受けることに鑑みれば、問題があると言わざるを得ない。
人権委員会は、内閣府の外局とすることが望ましく、そうでないとすれば、委員会は、客観性、専門性を持って調査・判断を行うことのできる、より十分な独立性を持ち、市民からの信頼に応えうる組織とならなければならない。
また、基本方針は、人権委員会が、地方においては、法務省の内局である法務局等の人的物的設備を利用することとし、人権委員会独自の事務局職員は、いくつかの地に配置されて法務局等の指導監督を担うことのみを想定している。しかし、人権救済申立に関する調査などを担う者が、経験と知識を持った委員会独自の事務局ではなく法務局職員であるとすれば、人権委員会が地方において十全に機能しないおそれがある。人権委員会は、地方を含めてその役割を十分に担いうる人的財政的基盤を持たなければならない。
パリ原則は、人権委員会が政府からの独立性を確保するために、自らの事務局と施設を持つことを求めているのであり、かかるパリ原則への十分な配慮を行いつつ、国内人権機関の設置に向けた法案づくりがなされるべきである。
個人通報制度については、大がかりな予算措置や人的体制が必要なものではないので、その実現については、特に障害があるとは考えられない。
個人通報制度は、人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにもかかわらず、国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合、被害者個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し、救済を求める制度である。
かかる通報のシステム作りや救済を求めるためのシステム作りを行うことで実現が図られるのであるから、日本政府においては、早期に実現するための決断こそが求められているというべきである。
当会は、わが国における人権保障を推進し、国際人権基準に則した人権保障を実施するため、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び真に政府から独立した国内人権機関の設置を早期に実現するよう、政府及び国会に対して求めるものである。
2011年(平成23年)9月26日
第一東京弁護士会
会長 木津川 迪洽